「櫂 →春灯→朱夏」から続く四部作最終巻です。「寒椿」を読んで久々の宮尾登美子の世界が快かったので、四部作最終巻「岩伍覚え書き」を読んでみました。
 宮尾登美子の「土佐もの」の主人公はいずれも女性ですが、その女性の背後に影のように付きまとう人物、影の主人公こそ「女衒・岩伍」です。

 作家は「岩伍覚え書」に至る3冊の小説で、岩伍にを好意をもって描いているわけではなく、どちらかというとその職業「芸妓娼妓紹介業」とそれを生業とする岩伍を嫌っているように思われます。嫌っているようですが、「寒椿」の「久千代の民江」で描かれた民江の父親対する情愛、わざわざ岩伍に一巻をさいた所などを見ると、岩伍に対する並々ならぬ思い入れも感じられます。例えば映画化された宮尾作品のキャスティングを見ると、岩伍というキャラクターが如何に期待されているかがよく分かります。監督の五社英雄、降旗康男もどっちかと言うとそっち系で、山下耕作にいたっては「緋牡丹博徒」などその道の巨匠、製作も東映です(笑。