宮尾登美子は、「櫂」「春燈」「朱夏」「寒椿」「岩伍覚え書」と読んで来ました。発表順から云うと、櫂→陽暉楼→寒椿→岩伍覚え書で、本書は作家の2作目に当たります。
 「櫂」は、妓楼に芸妓を斡旋する「紹介業」を舞台に、女衒・岩伍に嫁いだ喜和と作家の分身と思しきその娘綾子の物語でした。
 「櫂」に続く「陽暉楼」では、花柳界(女が女「性」を売る)という特殊な世界・妓楼とその周辺で生きる女達を描いています。娘を買って芸妓に育てる子方屋と、子方屋に売られ、芸妓二百数十人を抱え西日本一を誇る土佐の陽暉楼一の踊りの名手となった桃若(房子)の物語です。