あれこれ云うのが憚られる程有名な映画ですね。BSシネマでやっていたので久々に見ました。

 ちょっと分かりづらいですが、フィリップ(モーリス・ロネ)もトム(アラン・ドロン)もアメリカ人です。親の財産を使ってヨーロッパで遊び惚けているフィリップ。そのフィリップを連れ戻す仕事を5,000ドルでフィリップの親から請け負ったトム。「太陽がいっぱい」は、この「持つ者」と「持たざる者」の確執の物語です。

 この映画の魅力は、何と言ってもアラン・ドロンに尽きます。確かに男でも見惚れる美男子ですが、そんな事よりも、持たざる者の劣等感と被害者意識が、持つ者に対する殺意に変わる瞬間の魅力です。どんな手段を使ってでも現在の境遇から這い上がりたいという野性、あるいは野卑を体現したアラン・ドロンの魅力です。
 フィリップはトムを「走り使い」としてこき使い、「魚にはナイフを使うな」とか「ナイフの持ち方が違う」などトムの出自をいたぶり、トムがいないかの如くトムの前で公然とフィアンセを押し倒します。ボートに乗せられ遭難しかかった事件で、遂にトムの中で「スイッチ」が入ります。
 フィリップを殺し、フィリップを騙って財産と許婚のマルジュ(マリー・ラフォレ)を奪うトムの犯罪と破綻はあの有名なラストシーンを導く序章でしかありません。

 ここを読むと、私の戯言は飛んでしまいます、目からウロコです。

ネタバレ映画館で紹介したルネ・クレマンの映画は、海の牙(1947)、太陽がいっぱい(1960)、雨の訪問者(1969)、パリは霧に濡れて(1970)、狼は天使の匂い(1973)。アランドロン出演は、若者のすべて(1960)、地下室のメロディー(1963)、さらば友よ(1968)、シシリアン(1969)、暗黒街のふたり(1973)。
 
監督:ルネ・クレマン
出演:アラン・ドロン マリー・ラフォレ モーリス・ロネ