BSシネマ 映画 蒲田行進曲（1982日）

　舞台は東映京都撮影所（太秦）、角川映画制作で配給が松竹。監督が元東映の深作欣二で主演女優が松竹の松坂慶子で、タイトルが「蒲田行進曲」（蒲田は松竹の撮影所）。東映と松竹を足して2で割った様な映画ですが、「カツドウ」の世界を活写した映画には相応しいかもしれません。

　面白いです。映画スター銀ちゃん（風間杜夫）、銀ちゃん子どもを宿し捨てられた小夏（松坂慶子）、妊娠した小夏を押しつけられた大部屋俳優ヤス（平田満）。三人が東映京都撮影所を舞台に織りなす「キネマの天地」「キネマの世界」の物語です。
　この妊娠した小夏を押しつけられる話しです。殿様と家来ではあるまいしと思ったりもしますが、何処かで聞いたような。押しつけられたヤスは、以前から小夏を慕っていて、小夏もヤスの誠実さに答えてゆき、銀ちゃんはと云えば小夏と別れる原因ともなった女ともうまくいかず、スターの座も次第に危うくなって行きます。この落ち目の銀ちゃん復活のために、ヤスは命懸けの「階段落ち」を演じるわけです。この撮影シーンで、一瞬ですが大部屋役者ヤスが主役となり、スター銀ちゃんとの逆転が生まれるわけです。ここによると、
　
　直木賞の選評で選考委員の一人五木寛之は、『蒲田行進曲』を天皇制と身分制度についての影絵文学としている。

「天皇制」はどうか知りませんが、映画スターと大部屋俳優という「身分制度」の中で起きる鮮やかな逆転劇は、観客がヤスに仮託した夢でしょう。つかこうへいが「蒲田行進曲」に塗り込めたものはたぶんコレで、私たちが「面白い」と感じる後ろにあるものもコレじゃないかと思います。ヤスは庶民のヒーローなんですね。

　最近、NHKのBSで「山田洋次監督が選んだ日本の名作100本」を時々見ていますが、なかなか面白いです。

監督：深作欣二
脚本：つかこうへい
出演：松坂慶子　風間杜夫　平田満