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ピエール・ルメートル その女アレックス(2014文春文庫) [日記 (2024)]

その女アレックス (文春文庫)
 パリ警視庁犯罪捜査部カミーユ・ヴェルーヴェン警部が活躍する「警察もの」です。この手のミステリーは数多くありますが、個人的には、ハミ出し刑事と助手のシリア移民、二重人格の女性秘書の登場するコペンハーゲン警察の「特捜部Q」シリーズが好みです。犯罪捜査もさることながら、3人のコンビネーションが魅力のひとつです。
 本書でも、妻が誘拐され惨殺された過去を持つカミーユ、同じ女性と4回の結婚離婚を繰り返す上司のル・グエン、大金持ちで着道楽のルイ、病的なしみったれアルマン等ひと癖ある四人組が登場します。主人公カミーユは身長145cm、取り調べでは誰もがエッあんたが?と訝かられる始末。母親は著名な画家でニコチン中毒、カミーユに十分な食事を摂らせなかったため身長が伸びなかったのだと説明されています。

 若い女性が路上で誘拐され、四人組が捜査を担当します。誘拐されたのはアレックス、警察の捜査と誘拐されたアレックスが交互に描かれます。警察の捜査に比べてアレックスの奮闘は読み応え十分。アレックスは何故誘拐されたのか?、誘拐犯は「淫売がくたばるところを見てやる」と言うだけで理由は言いません。木の檻にアレックスを閉じ込め天井から吊るしてスマホで写真を撮るだけです。檻近くに水とペットフードを入れた籠を吊るし、ペットフードはアレックスの食糧かというとそうではなく、実はネズミのエサ。ペットフードを食べ尽くした後のネズミのエサはアレックス。誘拐犯は警察に追いつめられて早々と自殺しますから、誘拐犯を追う警察のサスペンスはネズミの餌食になるアレックスのサスペンスへと変わるわけです。

 アレックスの脱出劇は凄まじいです。彼女は自分の血をロープーに塗り、ネズミに齧らせて脱出を図ります。カミーユが監禁場所に踏み込んだ時には、アレックスは脱出を図った後。カミーユ逹刑事は脇役に過ぎません。本書は警察ものと言うよりアレックスの物語です。捜査の進展と共に硫酸を使った殺人事件が浮上し、『その女アレックス』の過去が明らかになります(ミステリーなのでこれ以上はかけません)。
 本書は、仏、英や日本で数々の賞を獲得したベストセラーだそうで、確かに面白いです →オススメ。

《カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ》
 悲しみのイレーヌ(2006)
 その女アレックス(2011)・・・本書
 わが母なるロージー(2011)
 傷だらけのカミーユ(2012)

タグ:読書
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