飯嶋和一は、『雷電本紀』『神無き月十番目の夜』『始祖鳥記』『黄金旅風』『出星前夜』と読んできましたが、ハズレ無しの作家です。本書は1988年第25回文藝賞受賞作で初期の作品で、1983年第40回小説現代新人賞「プロミスト・ランド」と「スピリチュアル・ペイン」の3作が入っています。

「汝ふたたび故郷へ帰れず」
 26歳の元ミドル級2位のボクサー新田駿一の再生の物語です。飯嶋和一らしい真っ直ぐな物語です。ボクシングというスポーツは、
頂点に立つ一握りのボクサー以外日本チャンピオン程度では食っていけず、アルバイト等の副業で生活を維持する必要があるそうです。減量とトレーニングに苦しむ割に報われることが少ないスポーツで、そうした割にあわないスポーツにもかかわらず、何故多くの人が惹きつけられチャンピオンを目指すのかその一端を垣間見させる小説です。