久々の合田雄一郎の登場です。雄一郎は『太陽を曳く馬』でも登場しますが、脇役にすぎず、合田雄一郎シリーズとしては、『レディー・ジョーカー』(1998)以来実に15年ぶりの登場となります。髙村薫はずっと読んできましたが、『晴子情歌』辺りから観念的になって読むのがシンドくなりました。ミステリを書いているつもりはない、とうそぶく髙村センセイですから、今回もミステリを期待しても無駄かな...。

 およそ髙村薫らしくない書き出しで、冒頭からコケます。高梨あゆみという12歳の少女が登場し、クリスマスの連休はディズニー・シーへ行くという高梨一家の華やぎと喧噪が描かれます。父親は都立病院の口腔外科の歯科医師、母親は大学の講師で町の歯科医の院長。本人のあゆみは、国立大学の付属中学に通い、『赤と黒』を読んで数学オリンピックを目指しているというオリコウさん。弟も同じ国立大学の付属小に通うという、絵に描いたような兄弟であり親子であり家庭。