珍しさも手伝ってのことでしょうが、モノクロのサイレント映画というのものがこんなに豊かなものとは思いませんでした。それだけ監督ミシェル・アザナヴィシウスの腕がいいのでしょう。俳優の口パクに併せて、見ているこちらが何時の間にやら頭が勝手に科白を作っているんですね、自分で笑います。セリフが無いので、俳優の表情を真剣に見てしまいます。映画の中で、サイレントは演技が過剰だと云うセリフがありますが、逆ですね。セリフがある分、演技がおろそかになっている部分があるかもしれません。映像や音に頼れない分、脚本と役者の演技力が要求されます。主演のジャン・デュジャルダンの豊かな表情を見ているだけで、映画を堪能できます。