(2)になると、西部劇にSF調が加わります。核戦争か何かで文明が破壊され、人々がエネルギー=ガソリンを奪い合う世界を描いています。(1)でマックスは警官でしたが、(2)では警察組織も崩壊していますから、ガソリンを求めて彷徨う「荒野の一匹狼」。引き続きV8の改造車に乗って、銃身を切り詰めた散弾銃みたいなものを携えています(犬も連続出場?)。
敵役は、暴走族には変わりは無いのですが、これもガソリンを求めて出没する野盗団。(1)でマックスは、パトカーを駆る警官も暴走族も走ることにかけては紙一重だと言ってました。(2)の冒頭で、事故を起こしたトラックからガソリンを抜き取るマックスが描かれ、ここでもマックスと野盗団は紙一重の存在です。
この野盗団の首領が、ジェイソン(13日の金曜日)の様にアイスホッケーのマスクを被る半裸の怪物。これにモヒカン刈りにボウガンで武装する手下が加わり、バイクとサンドバギーを駆りガソリンを求めて人々を襲うのですから、やはり“西部劇”です。
(2)では、やっとストーリーらしいストーリーが出てきて普通の映画らしくなります。マックスはこのジェイソン率いる野盗団に殺された男を彼のコミュニティー(集落)に送り届けたことで、野盗団vs. コミュニティーの争いに巻き込まれます。この時代、人々は荒野で小さな集団を作って暮らしています。殺された男の集落は、原油を採掘してガソリンに精製するコニュニティーで、このガソリンと設備を野盗団が狙っているという設定。コミュニティーの方も、ガソリン精製設備を中心に要塞化、火炎放射器と大型ボウガンで防備を図っています。収穫を狙って村を襲う野盗という構図は、『七人の侍』とよく似ています。
マックスが助っ人としてこのコミュニティーに入りジェイソンと戦うと『七人の侍』『荒野の七人』になるのですが、そうはなりません。マックスは一匹狼ですから誘いを断って再び荒野へ。
(2)には面白い人物が登場します。ひとりはジャイロスコープを操る男。マックスと関係ができてからマックスを相棒だと勝手に思い込み、コミュニティーに追いかけてきます。飛行帽にコート、タイツか何か履いているヘンなおっさんで、コミュニティーの若い女の子に惚れて何とかしようとまぁ笑いを誘う人物です。もうひとりが、ブーメランを操り敵を殺すという凄い業を持った6歳くらいの孤児。一言も喋らず不敵な面構えのこの男の子がマックスになつき、後を追おうとします。このふたりがストーリーを盛り上げてくれます。
ジャイロスコープ男 ブーメラン少年
要塞を放棄し、コミュニティーはガソリンを満載したタンクローリーとバスで、3200km彼方にあるという楽園を目指します。モーゼの『出エジプト記』です。このタンクローリーを運転するのがマックス。一旦コミュニティーから出て行ったのですが、ジェイソンにボコボコにされジャイロスコープ男に救われてまた戻って来て再登板。
このタンクローリーとジェイソン一味のカーチェイス+アクションがこの映画の見せ場、なかなかの迫力です。
コミュニティー一団はこの危機を乗り越えて楽園を目指し、マックスは砂漠に消えた...と成人したブーメラン少年によって思い出が語られて幕。あれ、この男の子喋れたんですねぇ、映画そのものがこの子の回想録だったわけです。
舞台を核戦争(とは一言もありませんが)後の荒野に置き換え、馬をバイクと車に乗り換えて西部劇を換骨奪胎、再編成した「西部劇」です。後のアクション映画に影響を与えたとありますが、『
ウォーターワールド』、『
ザ・ウォーカー』もこのバリエーションのひとつでしょうね。2本ともお薦めです。
第4弾『マッドマックス:フューリー・ロード』の公開も近いようですし、こなると第3弾『マッドマックス/サンダードーム』も見てみます。
メル・ギブソンは、このシリーズの後監督業に進出して歴史映画『
ブレイブハート』、キリスト受難を描いた『
パッション』、全編マヤ語の『
アポカリプト』と話題作を作っています。この3本、なかなかおもしろいです。
監督:ジョージ・ミラー
出演:メル・ギブソン