日本帝国主義の夢が潰えた国であり、故郷を捨てた日本人の再出発の夢が消えた土地。『主義者殺し』甘粕正彦終焉の地であり、戦後の日本を支えたシンクタンク「満鉄調査部」誕生の地、時速130kmで特急「あじあ」が駆け抜けた地。「満洲」という語は、日本人のDNAの中で来るべき目覚めを待つ夢として眠っているんではないかと、勝手に思っています。

 児島襄は初めて読みます。満州帝国を主人公としたノンフィクションに近い小説です。「集団抗争時代劇」の名称に倣うなら、さしずめ「集団戦争謀略小説」です(笑。
 第1巻は、満州事変の立役者でもある関東軍高級参謀板垣大佐と作戦主任参謀石原莞爾中佐を主人公にしつつ、ふたりに振り回される関東軍司令官本庄中将、朝鮮軍司令官林銑十郎中将、参謀本部建川少将など将軍たち、中国側に北大営の王鉄漢を配し、昭和5年の奉天から始まり、廃帝溥儀の天津脱出までを描きます。まさに「満州国演義」です。