このアンナとマリアは、『
誰が為に鐘は鳴る』のイングリッド・バーグマンとカティナ・パクシノウそのまんま(笑。
負傷したフランクリンを医者に診せるため、マリアの先導で6人は村へ潜入します。これも何処かで見たシーンなのですが、村の結婚式に紛れ込んだマロリー達とドイツ軍の落差がいいですね。村人のダンスの横をドイツ兵が隊列を組んで行進し、ナバロンの要塞を破壊しにきた連合軍のチームを結婚式の宴会に引き入れて匿います。
8人はドイツ軍に捕まったり逃げ出したりの紆余曲折を経て、最後はめでたくナバロンの要塞を破壊して幕。基本は戦争映画ですが、ミステリ+人間ドラマの要素も取り入れています。
《その1》
マロリーは、負傷して手術の必要のあるフランクリン少佐をドイツ軍に引き渡します。ドイツ軍に捕まれば当然治療してくれますが、その前にフランクリンを拷問、薬による自白によってナバロン上陸の目的を聞き出すはずです。マロリーはこの自白に目を付け、偽情報をフランクリンに吹き込み、ドイツ軍の攪乱を図ります。
もうひとつは、いざ爆破という時になって信管が壊されていることが発覚します。7人(フランクリン少佐はドイツ軍に捕まっているので7人)の中にスパイが紛れ込んでいるわけです。
このふたつは、伏線が弱いため(あることはあるのですが)いきなりの「種明かし」で、ちょっと唐突。もう少し「気を持たせる」伏線だったら言うことないのですが。
このミステリに人間ドラマを盛り込んでいるのが、この映画の特徴といえば言えます。以下ネタバレです。
《その2》
フランクリンに偽情報を与えてドイツ軍の混乱を狙った作戦を聞いて、ミラー伍長はマロリーに噛み付きます。ドイツ軍は自白剤を使わないかも知れない。フランクリンは自白する男ではない、拷問の末死ぬかも知れない、あんたは友人を利用したんだと怒りをぶっちまけます。マロリーは指揮官の苦しい決断を語り、昇進を拒み伍長に留まっているミラーを「逃げている」と非難します。ミラーは、フランクリン少佐と同じ立場に立たされたらあんたはどういう選択をする、そういう立場に立たせてやるとマロニーに毒づきます。
この後、見張りに立ったマロニーの元をアンナが訪れ、言葉を失ったアンナに、先生(アンナは元教師)俺が間違っていたのかなぁと問いかけ、心が通じ合うシーンが挟まれます。これ伏線。
この応酬を受けてスパイ疑惑が発覚するわけです。スパイは誰だ! ⇒何とヒロインかと思ったアンナがスパイだったのです。これを暴くのもミラー。ミラーはアンナの服をはぎ取り、背中に拷問の傷が無いことでアンナを追い詰め自白させます。アンナはドイツ軍に捕まり、慰安婦(いま話題の慰安婦)にすると脅されてスパイとなったようです。
さて問題はこれからで、アンナを生かせておけばドイツ軍に計画がバレる。アンナの処置をどうするだとミラーはマロニーに決断を迫ります。つまり、マロニーはフランクリンの立場に立たされたわけで、マロニーはゆっくり拳銃を抜きます...。
というドラマもあって、なかなか楽しませてくれます。続編『ナバロン嵐』もあるようなので、機会があれば見てみたいです。それより、アリステア・マクリーンの『女王陛下のユリシーズ』か何かが本棚にあったはずなので、そちらが先か。
パパディモス一等兵役のジェームズ・ダーレンは何処かで見たことあると思って調べてみると、1960年代のTV映画『タイムトンネル』にがレギュラー出演していました。
でおすすめかというと、今となっては古いですが脚本がわりと良くできているので、見て損は無いかもしれません。戦争冒険活劇としてはジョン・スタージェスの『
鷲は舞いおりた』の方がおすすめです。
監督:J・リー・トンプソン
出演:グレゴリー・ペック デヴィッド・ニーヴン アンソニー・クイン アンソニー・クエイル イレーネ・パパス