織田作之助『わが町』 →川島雄三『わが町』 →『洲崎パラダイス』です。川島雄三は『わが町』『幕末太陽傳』を見ましたが、三本ともコメディ色の濃い映画です。『わが町』の舞台は大阪の下町「河童路地」、『幕末太陽傳』は品川遊郭、『洲崎パラダイス』は、江東区の赤線地帯。下町、場末を舞台に、そこで生きる人々の姿を活写した作品です。庶民の哀歓を描いたと言いたいところですが、むしろ主人公を突き放したようなところがあります。

 洲崎パラダイスは、所謂「赤線地帯」です。映画の中で「売春防止法」が施行される話が出てきますから、時代は1955年。映画では、洲崎パラダイスの様子は一切出てきません。舞台は、洲崎パラダイスの門の見える一杯飲み屋とその周辺。洲崎パラダイスに入る一歩手前の赤信号でストップした、蔦枝(新珠三千代)と義治(三橋達也)、一組の男女の物語です。