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映画 ゴールデン・ボーイ(1998米) [日記(2014)]

ゴールデンボーイ [DVD]
 何でもない日常の亀裂から恐怖を紡ぎだす名手、スティーヴン・キング原作の映画です。今回の恐怖は「ナチ」。
 高校生のトッド(ブラッド・レンフロ)は歴史の授業で知ったナチズムに昏い情念をかき立てられ、ホロコーストについて調べ始めます。そしてバスに乗り合わせた老人が、かつては絶滅収容所の高官ではないかと疑い、指紋まで採取して正体を暴きます。老人の名はアーサー・デンカー(イアン・マッケラン)、クルト・ドゥサンダーとして多くのユダヤ人を虐殺し、イスラエルの眼をかいくぐってアメリカの田舎町でひっそりと暮らしているところを、モノ好きな高校生に見つかってしまったということです。

 トッドは、警察に届けることをせず、自らのサディスティックな欲望を満足させるために、デンカーを脅し、ホロコーストの様子を事細かに証言させます。終いには、ナチ親衛隊の制服を手に入れてデンカーに着せ、デンカーに命令を出す「ヒトラー」となります。
 脅迫されていやいや証言していたデンカーも、制服を着せられトッドの号令で行進、敬礼を繰り返す間に、次第に50年前の親衛隊クルト・ドゥサンダーとして目覚めます。名優イアン・マッケランですから、この変身は堂にいった演技です。この映画で一番恐ろしいシーンかもしれません。クルト・ドゥサンダーに戻ったディンカーは暴力と殺戮へ傾斜し、飼い猫をオーブンで焼き殺そうとします(なんぼ何でもそんなシーンはありません)。

 トッドは、クルト・ドゥサンダーとホロコーストに入れあげていたため、学校の成績が落ち両親が呼び出されるハメとなります。トッドの両親は、彼がディンカーの家にたびたび行っていることを知っていますから、ディンカーが成績下落の原因であり、そのことからディンカーの正体がバレないとも限りません。ふたりは一計を案じ、ディンカーを祖父として教師(カウンセラー)と面接しこの場を切り抜けようとします。元ナチの戦争犯罪人と高校生が共犯関係となり、やがてふたりの主従関係は逆転し、ディンカーがトッドを支配するようになります。ディンカーはトッドとの関係を文書にし、自分が何かあったら全てが公になるとトッドを脅します。
 ディンカーは浮浪者を自宅に引き入れて殺し、トッドを呼んでトドメを刺させます。これで完全な共犯関係が成立します。やや類型的ですが、暴力と殺戮に明け暮れた親衛隊と、何処にでもいる高校生を同じ地平に立たせる、というのがこの映画のテーマです。

 ここからが少し軟弱。ディンカーは心臓発作で斃れて病院に運ばれ、隣のベッドの病人が収容所で妻と子をディンカーに殺されたユダヤ人だったことから一気にラストへとなだれ込みます。

 原作は読んでいませんが、スティーヴン・キングがこの程度の小説を書くわけはなし、映画化出来そうもない何かがあるようです。ということで、竜頭蛇尾の感があり、お薦めという程ではありません。


監督:ブライアン・シンガー
原作:スティーヴン・キング
出演:ブラッド・レンフロ イアン・マッケラン

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