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映画 洲崎パラダイス赤信号(1956日) [日記(2014)]

日活100周年邦画クラシック GREAT20 洲崎パラダイス 赤信号 HDリマスター版 [DVD]
 織田作之助『わが町』 →川島雄三『わが町』 →『洲崎パラダイス』です。川島雄三は『わが町』『幕末太陽傳』を見ましたが、三本ともコメディ色の濃い映画です。『わが町』の舞台は大阪の下町「河童路地」、『幕末太陽傳』は品川遊郭、『洲崎パラダイス』は、江東区の赤線地帯。下町、場末を舞台に、そこで生きる人々の姿を活写した作品です。庶民の哀歓を描いたと言いたいところですが、むしろ主人公を突き放したようなところがあります。

 洲崎パラダイスは、所謂「赤線地帯」です。映画の中で「売春防止法」が施行される話が出てきますから、時代は1955年。映画では、洲崎パラダイスの様子は一切出てきません。舞台は、洲崎パラダイスの門の見える一杯飲み屋とその周辺。洲崎パラダイスに入る一歩手前の赤信号でストップした、蔦枝(新珠三千代)と義治(三橋達也)、一組の男女の物語です。

 蔦枝と義治のコンビは、『夫婦善哉』の蝶子と柳吉を彷彿とさせます。蔦枝は洲崎パラダイスにいた元娼婦でしっかり者?、一方の義治は、蔦枝のことが原因かどうか分かりませんが勤め先をしくじって失業。有り金60円のふたりが、さぁどうしようと行き暮れる橋の上から映画はスタートします。別れるのなんのと言い争った末、蔦枝は義治を振りきってバスに乗り、義治は蔦枝を追いかけ、バスを降りた先が洲崎パラダイス。赤信号で、ようよう洲崎パラダイスの手前で停まったわけです。
 
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 蔦枝は、洲崎パラダイス門前でお徳(轟夕起子)がやっている一杯飲み屋に酌婦として住み込み、義治もそこに転がり込みます。お徳は、亭主が洲崎の娼婦と駆け落ちして、息子二人を育てているという境遇で、本当に男というものは...と蔦枝に愚痴をこぼし、人のいいお徳は義治を蕎麦屋の出前持ちの仕事を世話します。この蕎麦屋の屋号が「だまされや」、だまされたつもりで食べてみようという洒落ですから、笑います。義治の他もうひとり出前持ちがいるのですが、これ小沢昭一。いつも鼻歌交じりで時には出前のざる蕎麦をひっくり返すという落語の登場人物のようですから、笑わせます。たしか、『わが町』にも出ていました。『幕末太陽傳』は落語『居残り佐平次』などを下敷きにしていますから、川島には落語趣味があるのでしょう。

 お徳の飲み屋に立ち寄る神田のラジオ商、落合(河津清三郎)が登場し、蔦枝は義治を見限って落合の世話になり、飲み屋から消えます。義治は蔦枝を探して神田界隈をウロウロ。蔦枝はというと、蕎麦屋の出前持ちの自転車を見かけるたびに義治ではないかと心が騒ぐ始末。
 とこうする間に、女と出奔したお徳の亭主が帰ってきて、お徳はいそいそと白粉を塗るということになります。とかく男と女の関係は側で見ていてもよく分からない、という映画です。

 ラストは、蔦枝と義治のふたりが、これからどうしようと橋の上に佇むという冒頭と同じシーンです。冒頭では蔦枝が行動を起こし義治が彼女に引きづられるようにバスにのりましたが、ラストでは逆。義治が行動を起こし、義治を追って蔦枝がバスに乗り込みます。

監督:川島雄三
出演:新珠三千代 三橋達也 轟夕起子 河津清三郎 芦川いづみ

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