同じ著者の『文人悪食』が面白かったので、kindle版のある本書を読んでみました(1-Clickの誘惑です)。『文人悪食』は、明治~昭和に至る文人(小説家、詩人、歌人、俳人)をその作品に現れた「食」を俎上に斬りまくった痛快な「作家論」です。本書は、これら文人の死について寄せられた(または文人自ら書いた)追悼文を俎上に乗せ、文人その人に迫ろうというものです。その数49人。嵐山光三郎さんは元編集者、現作家とはいえ、その博覧強記には驚かされます。アンソロジーですから、何処から読もうが誰から読もうが自由で、手軽に読めます。

 追悼文と言うと、学生時代に愛読した高橋和巳が亡くなった時に吉川幸次郎の「高橋よ!」と呼びかけた追悼文を思い出します。中身は忘れましたが、学門をやっていれば大成したものを、小説など書いて大学紛争を真面目に受け止めるから夭折したんだ、なんと惜しいことか悲しいことか、という恩師として弟子の死を切々と悲しむ漢文読み下し調の追悼文だったと思います。吉川の他、埴谷雄高、梅原猛など錚々たる文人学者が追悼を寄せたものです。