父母を亡くし彦根の叔父のもとで育った登勢が、京都伏見の船宿「寺田屋」に嫁ぎます。お登勢?、寺田屋?、そうです、「寺田屋お登勢」の物語です。昭和19年の発表で、時局がら小説の素材もこうした歴史物に求めていたのでしょう。寺田屋事件や坂本龍馬にかかわる「お登勢」も、織田作の手にかかると、幕末の女傑ではなくごく普通の女性として輝き出します。