映画は、歴史の勉強には最適な教材だと思います。『誰が為に鐘は鳴る』でスペイン内戦の、『アラビアのロレンス』でアラブ独立戦争の、『ドクトル・ジバゴ』でロシア革命の現場に、ヒーロー、ヒロインと共に立ち会うことが出来ます。映画ですから、当然製作者の意図や脚色があり、そのまま信じるわけはいきませんが、映画をきっかけに歴史の内懐に分け入ると、思わぬ収穫があります。

最後の誘惑(1988米)】
 キリスト教のバイアスのかかったイエス・キリストを、「イスカリオテのユダ」「マグダラのマリア」に新しい解釈を取り入れ、新しい「ナザレのイエス」を描こうという、マーティン・スコセッシの意欲作です。イエスを売った裏切り者のユダが、この映画ではローマ帝国からユダヤの国を取り戻そうとする活動家であり、イエスに頼まれてイエスをローマ軍に売り渡します。また、ゴルゴダの丘でイエスの処刑を看取り、その復活を見届けた「マグダラのマリア」はイエスと馴染んだ娼婦。ところが、イエスはゴルゴダの丘で死ななかったのです。天使に救けられ、「マグダラのマリア」と結婚し、マリアが亡くなると今度は「ベタニアのマリア」と結婚して多くの子孫を残すという、第二の生を全うします。
 マグダラのマリアとイエスの結婚は、昔からある有名な話ですが、革命家ユダ説というのは目からウロコです。簡単なイエスの事跡を復習して映画を見ると、ナルホド!となります。説得力のある「マユツバ」映画としてお薦めです。