- 日記(2014)
学業を捨てて志願したポール(リュー・エアーズ)達5人は、フランスとの前線である西部戦線の第二中隊へ配属されます。第二中隊で出会うのが、カチンスキー(ルイス・ウォルハイム)たち古参兵。カチンスキーの特技は物資の調達で、腹を空かせた新兵にかっぱらってきた豚を食べさせ、古参兵の実力を見せつけます。日本陸軍と違って、古参兵の新兵イジメというものはありません。冗談に紛らわせて、戦場で生き延びる知恵を教えます。
鉄条網敷設で早くも新兵のひとりが戦死し、またひとりとポールの同級生は減ってゆきます。病院で死んだ同級生のブーツが死を招くように、そのブーツを貰った兵士達は次々と戦死してゆきます。
鉄条網敷設で早くも新兵のひとりが戦死し、またひとりとポールの同級生は減ってゆきます。病院で死んだ同級生のブーツが死を招くように、そのブーツを貰った兵士達は次々と戦死してゆきます。
ポール ポールとカチンスキー
爆破の跡にできた穴に逃げ込んだポールは、これも穴に逃げ込んで来たフランス兵を刺し殺します。照準の向こうの敵を撃ち殺すのではなく、目の前の敵を剣を使って刺し殺すという現実にポールは衝撃を受けます。兵士のポケットから彼の妻子の写真を発見し、ポールは敵の兵士も自分と同じ只の人間に過ぎないことを知るわけです。
ポールのこの体験を、カチンスキーは一言で片付けます。
殺さなきゃお前が殺されていた。それが戦争なんだ
西部戦線には食料も満足に届かず、兵士は飢えています。150人いた第二中隊は激戦で兵力は半減しますが、食料は150人分届き、兵士たちは「二人分食える!」と喜びを隠しません。二人分とは、死んだ戦友の食料であり、戦友の死が生き残った兵士に喜びをもたらすという皮肉な実相を描き出します。カチンスキーに言わせれば、「それが戦争だ」ということになるのでしょう。
この映画は戦争を複眼で描いています。例えば昨今話題の「従軍慰安婦」やのような話があるのかどうか。当然ありませんが、兵士と性の問題が少しだけ出てきます。ポールたちは川に水浴に行って、向こう岸にフランスの娘たちを発見します。食料を見せると反応があり、後日、パンやハムを持って訪れる大歓迎されます。かなり牧歌的に描かれています。
負傷したポールは3年ぶりに帰郷し、戦場へ旅だった学校を訪れます。ポールたちの愛国心を鼓舞し、戦場へ追い立てたその同じ教師が、またも学生たちに愛国心を説き彼等を戦場へと駆り立てようとしています。教師はポールを見ると、英雄の帰還とばかり彼に勇ましい演説を期待します。
ポールは戦争の悲惨さを話し、教師が英雄を作り死に追いやろうとしていることを非難します。前方には戦場、後方には戦争を賛美するドイツ国民、ポールは休暇を早々と切り上げて戦場へと戻って行きます。
ラストシーンは美しくも痛ましいです。戦場に帰ったポールは、塹壕の銃眼から「蝶」に手を伸ばし、敵の狙撃兵によって撃ち殺されます。彼が手を差し伸べた蝶とは、ポールの見果てぬ夢だったのでしょう。
ラストシーン1 ラストシーン2
1930年の映画ですが、戦闘場面はリアルで凄絶です。実写ですから、俳優たちの息遣いが伝わってきます。手垢にまみれた「反戦」などどうでもいい話で、戦争の実相を描いた、今日でも十分通用する映画です。お薦め。
原作:エーリッヒ・マリア・レマルク
出演:リュー・エアーズ ウィリアム・ベイクウェル