ゴードン・W・プランゲは、1946年~51年、GHQ・G2(参謀第2部)の戦史室にいた歴史学者のようです。日本の民主化を進めた民政局(ホイットニー)が左?とするなら、ウィロビーが率いるG2は右、保守派です。ウィロビーには、『赤色スパイ団の全貌 ゾルゲ事件(ウィロビー報告)』という著作(名前を貸しているだけ?)がありますから、プランゲの本書も少し用心して読む必要がありそうです。訳者の千早正隆氏も旧軍人であり、G2でプランゲの下で働いていたようです。

 タイトル通りゾルゲが東京に上陸した1933年(昭和8年)9月から、1944年(昭和19年)11月の処刑までの、11年間のゾルゲ及び尾崎秀実、宮城与徳、マックス・クラウゼン等「ゾルゲ諜報団」の活動を描いています。『ウイロビー報告(1949)』、『現代史資料 ゾルゲ事件(1962)』などがベースとなっているので、新しい発見はありませんが、諜報の実態を描いていると云う意味ではスパイ小説として楽しめます。もっとも、昭和史とゾルゲ事件の概要を知っているという条件は付きます。