netを見ると評価はもうひとつですが、個人的には面白かったです。デカプリオは、「タイタニック」でブレークした後の人気絶頂期(今でも人気ありますが)ですから、見る方はヒーロー性のあるディカプリオを期待していたのではないかと思います。デカプリオ演じる「ザ・ビーチ」の主人公リチャードに、ロマンもヒーローもありません。そのあたりが、評判イマイチの原因でしょうね。映画の主題は、ちょっとありきたりですが、美しいビーチ=楽園を手に入れ損なった失楽園の物語だからです(と言うほど深刻なものでもないですが)。
若さにものを言わせて世界を放浪するリチャード(レオナルド・ディカプリオ)は、バンコクの安ホテルでダフィ(ロバート・カーライル)と知り合い、ダフィは現世はガン細胞の様なものだと呪って自殺します。ダフィからリチャードに1枚の地図が託されます。この世のものとは思われない手つかずのビーチの場所を書いた地図です。
世界旅行に飽きたリチャードは、同じ旅行者のエティエンヌ(ギヨーム・カネ)とその恋人フランソワーズ(ヴィルジニー・ルドワイヤン)を誘いビーチを探しに出かけます。
普通、楽園は見つからないものですが、三人は見つけてしまうんですねぇ。ビーチのある小島には先客がいます。大麻畑を守る数人の農民(と自分たちは言ってますが、機関銃持ってます)とビーチで自給自足する20名ほどの集団です。この集団は、いずれもリーチャードの様に世界を放浪する欧米の若者のなれの果てで、サル(ティルダ・スウィントン)という女性をリーダーとしたカルト集団?。農民たちは、これ以上居住者を増やさないと言う条件でこの集団の存在を許しているという関係です。
これが映画の枠組みですが、集団にしても農民との関係にしても、けっこう危うい均衡の上に成り立っているわけです。ひとたび均衡が崩れるとこのユートピアは壊滅します。ユートピアは大抵そういうものでしょう。
やがて均衡を崩すものがやって来ます。サメと外部からの侵入者です。集団は食料を海に依存していますが、ビーチにサメが現れひとりが死亡ひとりが重傷を負います。重傷者を島外に運ぶと死んでいまい、医者を呼ぶと島の秘密が守れません。集団にとって「目障り耳障り」なこの重傷者を、彼等は遺棄します。これが、集団の正体です。さらに、リチャードが残してきた地図を頼りに4人の若者がこの島を訪れ、ますます均衡は危ういものとなります...。
まぁ楽園は予定通り崩れ、集団のメンバーは元の世界に帰ってゆきます。この「ザ・ビーチ」の様な楽園とその崩壊の構図は、それこそ、どこにでも転がっていそうです。だからこそこの映画に惹かれるのかもしれません。
監督:ダニー・ボイル
出演:レオナルド・ディカプリオ ロバート・カーライル ヴィルジニー・ルドワイヤン