「インソムニア」つながり(ロビン・ウィリアムズが出ている)で見ました。 オープニングの音楽が、ビートルズの “When I'm Sixty-four” で、思わず手を叩いてしまいます(歳がバレます)。おまけにヒューム・クローニンとジェシカ・タンディが出ていて、封切りは何時だと思ったら1982年で原作は1978年の刊行です。残念ながらジョン・アーヴィングの原作は読んでいません。
(原作がそうなんでしょうが)かなりヘンな映画です。主人公T.S.ガープ(ロビン・ウィリアムズ )の生まれてから三十数歳までの人生をたどることで、その時代時代のアメリカを浮かび上がらせようという仕組みかとも思うのですが、何しろ原作がブンガクですから、一筋縄ではいきません。同じジョン・アーヴィングの「サイダーハウス・ルール」もヘンな映画でした。
どういう意図があるのか分かりませんが、ガープは出生からしてヘン。ガープは、結婚はしたくないが子どもが欲しいという看護師ジェニー(グレン・クローズ)が、病院に運び込まれた重傷の兵隊をレイプし精子を「採取」して生まれたという設定です。私生児なわけです。偏見と差別の対象である私生児という存在ですが、ガープはすくすくと素直に育ちロビン・ウィリアムズ になります(笑。
この映画は、家族と言うものが主要なテーマかとも思うのですが、母親は(息子ガープも含めて)男性を欲望の「塊」と捉えて性に異常な嫌悪を抱き、ガープ本人は私生児で父性が欠如するというちょっと異常な世界です。
ジェニーは「性の容疑者」という自伝を執筆し、折からのウーマン・リブの風潮で本は売れに売れ作家となります。この母親は、後に自宅を開放して女性の「駆け込み寺」みたいなコミューンを立ち上げ、そこに性同一性障害の男性や、暴行に会った少女を匿っています。ストーリーは何処へ行く?ところが、ロビン・ウィリアムズがあの笑顔でニタッと笑うと、この異常な世界がなんとなく異常で無くなるから不思議です。
おまけにガープはいうと、学生時代の恋人と結婚しますが、妻は大学の教員として自立していて彼は作家兼専業主夫。さらにです、ガープの妻は夫を裏切って教え子と不倫、完全に男女の世界が逆転してる?。この不倫騒動も、妻と教え子がいちゃついている車にガープが追突し、妻は相手のナニを噛み切ってしまうという喜劇を生みます。そのときに、長男(次男だったか?)は亡くなり、次男は片目を失うという不幸に見舞われ、これは悲劇ではないか!と思うのですが、映画はサラッと流します。この後、母親ジェニーはウーマンリブの集会で銃で撃たれて死に、ガープ自身もジェニーの信奉者に撃たれます。どうなっいるんだ!と思うのですが、ロビン・ウィリアムズがあの笑顔でニタッと笑うと、これも悲劇とは思えなくなります。
「ガープの世界」は、私生児、強姦、暗殺に不倫と何でもありなんですが、この映画で描かれた世界は、一体何なんでしょう、これこそがアメリカ?。どうもWhen I'm Sixty-fourの世界ではないような気がします。Whatever Will Be, Will Be(Que sera sera)の世界?。
監督:ジョージ・ロイ・ヒル
出演:ロビン・ウィリアムズ グレン・クローズ ジョン・リスゴー アマンダ・プラマー