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映画 人情紙風船(1937日) [日記(2012)]

人情紙風船 [DVD]
 BSシネマ「山田洋次監督が選んだ日本の名作100本~家族編~」で放映されていました。1937年(昭和12年)の公開です。1937年というと日中戦争が始まった年で、山中貞雄もその日中戦争に出征して戦死します。とても75年前の映画とは思えないほどで、現代の世話物として立派に通用します(しそうです)。江戸の長屋を舞台に、髪結の新三(中村翫右衛門)、浪人・海野又十郎(河原崎長十郎)のふたりを軸に、長屋の店子、大家・長兵衛の織りなすオムニバス。
 長屋で浪人者の首吊り自殺が起き、隣近所が集まる通夜で映画の幕が開きます。新三の計らいで大家の長兵衛をスポンサーに、棺桶を前に飲めや歌えの大宴会。とぼけた長屋の住人達と大家と言えば親も同然の世界は、もう落語の世界です。

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 長屋                         通夜の宴会 
 
 ストーリーの方は、娘を某家中の家老の息子に嫁がせようとする大店・白子屋、その企みを逆手にとって娘を誘拐し強請をはたらく新三の物語。白木屋の娘の縁談に裏で動く武士・毛利、昔のよしみで毛利に仕官を頼み込む浪人・海野又十郎の物語。このふたつが絡みあって進行し、浪人の首吊りで幕を開けた映画は、浪人の心中で幕を閉じます。落語「長屋の花見」の世界と武士の誇りが時代と拮抗して崩れてゆく世界が平行して描かれています。
 
 新三の物語は河竹黙阿弥の歌舞伎「髪結新三」という元ネタがあるそうです。歌舞伎の方は、白子屋の娘は持参金付きの婿を迎えるという枠組みですが、映画の方は持参金を持って武士に嫁入りするという設定。この婚姻をまとめる役回りとして毛利という武士を登場させ、毛利に仕官を頼む浪人海野又十郎の物語をくっつけます。「髪結新三」の方は登場人物もストーリーも大体歌舞伎通り?。「人情紙風船」は、

長屋の花見 ← 歌舞伎・髪結新三 →武士の世話物(海野又十郎)

という構図になります。あるいは

長屋の住人+大家 → 髪結新三 vs. 白子屋(+ヤクザの源七)+ 毛利 vs. 海野又十郎

と書き換えてもいいでしょう。歌舞伎「髪結新三」に落語「長屋の花見」をくっつけ、「変形・曾根崎心中」を足した、山中貞雄版・世話物と言うことができます。気になるのが、毛利 vs. 海野又十郎の構図です。タイトルの「紙風船」は、作中、海野又十郎の妻「おたき」が内職で作る紙風船から取っています。また、ラストは紙風船が小川の流れに乗って遠ざかるシーンで幕、です。しからば、人情は紙風船の如く「軽い」のか?それとも反語なのか?です。
 
PDVD_023.jpg 人情紙風船.jpg
 金魚売り
 
監督:山中貞雄
出演:河原崎長十郎 中村翫右衛門 市川莚司(加東大介)

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