- 日記(2012)
問題のこのシーン ポーラとアントン
コモ湖に行く列車の中で、ロンドンのポーラが住んでいた近所の住人と出会い、伯母の殺人事件の話が出ます。この後、ポーラはコモ湖の駅で降りますが、先回りしていたアントンに腕を取られます。この象徴的シーンから、ポーラの恋は変質してゆくのですが、まぁそれは後になって気づくことですね。このオバサンは、後にポーラとアントンがロンドンで伯母の家に住むようになってからも度々登場し、おせっかいをやくという役回りで笑わせてくれます。
そう、ポーラとアントンは結婚して伯母が殺された家に住むこととなります。ここから映画はサスペンスの趣を強めてゆきます。別に幽霊は出ませんが、殺人事件のあった家に住むわけですからあまり気持ちのいいものではありません。ポーラは徐々に神経を病んでゆきます。実は神経症でもなんでもなく、アントンがポーラを追い込んでゆくわけですが、これはもうミエミエです。観客はアントンの行動に不信を抱き、これはメロドラマでは無さそうだと思い至るわけです。ロンドン塔の博物館で王冠に光るダイヤモンドを見て、アントンの眼もキラリと光るわけですから、これはもうナニです。おまけにです、キャメロン(ジョゼフ・コットン)なる人物が登場して伯母とウリふたつのポーラに声をかけます。「第三の男」のジョゼフ・コットンですから、観客は何かあると身構えるわけです。もっとも、「第三の男」が公開されたのはこの5年の後ですから、「ガス灯」公開時に「身構えた」観客はいません(笑。ポーラを追い詰めるアントンの目的とは何か?キャメロンの正体は?美女ポーラの運命や如何に!です。
ガス燈の灯る夜霧のロンドン 夜霧に消える
60年以上前の映画ですからストーリーやプロットは「それなり」です。その辺りの違和感を気にせずに、イングリッド・バーグマンの美貌、夜霧に消えるシルクハットのシャルル・ボワイエ、それを尾行するジョゼフ・コットンを楽しめばいいのでしょう、名画です。監督は「マイ・フェア・レディ」のジョージ・キューカー。
出演:シャルル・ボワイエ イングリッド・バーグマン ジョゼフ・コットン