SSブログ

映画 十三人の刺客(2010日) [日記(2012)]

十三人の刺客 通常版 [DVD]
 時代物が続きます。 尊皇攘夷の「桜田門外ノ変」と比べると、こちらはもう剣戟もので理屈抜きに楽しめます。
映画と云うのはエンターテイメントですから、あれこれ盛り込んで方向が定まらないより、主題を一本に絞り混んでそれに向かってドラマを収斂させた方が効果があると思われます。「十三人の刺客」は、文字通り十三人の刺客が殺しまくります。殺すという一点に収斂させるわけです。十三人の刺客が殺しまくる映画ですからネタバレでも面白さが減じることはありません。以下完全ネタバレ。

 明石藩主の松平斉韶(稲垣吾郎)という殿様がいるんですが、これが発達障害をかかえたような殿様で、気に入らない藩士を惨殺するは、参勤交代で宿泊した尾張藩の藩士の妻に手を付けその夫を斬り殺すは、もうしたい放題。幕府に知れると大事ですから普通なら隠居させるか何かの手を打つはずですが、この殿様、将軍の腹違いの弟で次期大老?のため誰も手を出せないというわけです。稲垣吾郎クン絶品の演技で、本当にコワイです。

 この殿様は実在人物ですが、名誉のために言っておきますと、ごく普通の殿様で明治元年に天寿を全うしています。ただ、後を継いだ殿様が将軍の子で、強引に明石藩に入って尾張藩と事を起こしています。何故
斉韶の殿様が大悪人になったんでしょうね。

 この斉韶をノサバラしては天下の仕置ができない、大老になられては被害は庶民に及ぶ、公に処分できないなら暗殺してしまえ、と考えた老中のが平幹二朗平幹二朗御目付・役所広司に、おまえ何とかしろと命じ、役所広司は参勤交代の途中スキを見て斉韶を殺してしまおうと刺客を集めます。十三人集まったので、「十三人の刺客」(47人集まれば「四十七人の刺客」)。参勤交代ですから、何百人もの家来を引き連れての行列ですから、とても13人では歯が立ちません。そこを何とかする、何とかしたのがこの映画の見どころです。
 
 参勤交代の行列は尾張藩を通るわけですが、因縁の尾張藩を口説いて「明石藩通行禁止」の措置を取らせます。斉韶一行は、荷物は街道を行かせて藩主は50人ほどの手勢をつれて間道を進み、尾張藩を抜けたところで本体と合流する方法を取るだろうと予測します。戦力が分散したところを間道の小さな宿場に誘導して一気に殲滅、というのが役所広司が立てた戦術。 
 何倍もの敵あたるわけですから用意万端、戦場となる宿場に爆薬を仕掛け、武器を配置し、仕掛けを作って敵を翻弄しようというわけです。七十数戸の宿場を一戸50両で宿場ごと買い取ってしまいます。3500両を前に腰を抜かすのが庄屋の岸部一徳。刺客一行に村の女を取り持とうとして顰蹙をかったり、なかなか笑わせてくれます。この宿場を自分たちに有利な戦場に作り変える辺りは、黒澤明の「七人の侍」とよく似ています。明石藩(野武士)と「戦争」するために十三人(七人)が集まり、泥にまみれて闘い、最後に生き残った刺客(浪人)が武士を捨てよう(また死に損なった)とつぶやいたり、類似点は多いと思います。 
 刺客のリーダー役所広司vs.明石藩のリーダー御用人・市村正親も面白いです。このふたり、昌平黌と鏡新明智流桃井道場?の同門でライバルという設定で、敵味方に別れ相手の手の内をさぐり、役所広司は義のために、市村正親は忠のためにそれぞれの武士道に命を懸けます。中央官僚vs.地方役人の趣で、市村正親が役所広司に劣等感を抱いていたと告白する辺りは泣かせます。

 宿場に現れた斉韶一行は何と二百人、十三人vs.二百人の戦争が開始されます。200÷13≒15ですから、刺客一人で15人を倒す勘定ですが、まぁ映画ですから...。しかしなんとも凄まじい映画です(PG12指定)

 原作が「四十七人の刺客」の池宮彰一郎。役所広司以下ベテラン俳優の演技はまぁそれなりですが、稲垣吾郎の馬鹿殿は感心しました。
vlcsnap-2012-06-12-22h30m53s165.jpg vlcsnap-2012-06-12-22h24m56s170.jpg
 
監督:三池崇史
原作:池宮彰一郎
出演:役所広司 松方弘樹 稲垣吾郎 市村正親 平幹二朗 松本幸四郎

nice!(2)  コメント(2)  トラックバック(0) 

nice! 2

コメント 2

月夜のうずのしゅげ

あっと驚くごろうちゃんの首・・・のことが見た者の間で話題になりました。
時代背景の流れ中で、土地や人名、戦術も心情も詳しく賢く書かれていますので、視野が広がります。
by 月夜のうずのしゅげ (2012-06-15 09:18) 

べっちゃん

脚本がいいですね。何しろ1963年版は池宮彰一郎ですから。
by べっちゃん (2012-06-15 21:03) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0