いちおう(にわか仕込みの)映画ファンですから、こういう映画も見る必要があるだろうと見てみました。
 要するに、前科15犯でフランス本土に居れなくなり、アルジェのカスバに逃げ込んだ犯罪者ペペ・ル・モコ(ジャン・ギャバン)の「望郷」です。カスバでギャビー(ミレーユ・バラン)というパリの香りのする女性に出会い、望郷と恋の錯綜したなかで命を落とす物語です。
 この映画のポイントはアルジェですね。こういう古い映画を見ようかと云う人は、アルジェリアの時間と空間が頭に入っているでしょうが、ザクっとおさらい。中世はオスマントルコの支配下にあって、近代は19世紀中頃から1962年までフランスの植民地です。映画の中で刑事がトルコ帽を被っていますが、そうした歴史があるからです。港町アルジェは海を挟んで対岸はスペイン、地中海の向こうはフランスですから、食い詰めてアルジェに流れ込んだ宗主国の仏人が、帰りたくても帰れない「望郷」に胸を掻きむしられるということになるのでしょう。