原作は、フランス自然主義文学の大家エミール・ゾラ『テレーズ・ラカン』。監督が“フランス映画史に今も燦然と輝く名作”『天井桟敷の人々』のマルセル・カルネ。と言っても、読んでないし見ていません。たまたまBSでやっていたので、きっと凄いんだろうと見ました。
 あれ?ヒッチコックみたい、という映画です。
 不倫の果てに夫を殺してしまうと云うサスペンスです。現在であればいかにもありそうな話しですが、原作が書かれたのは150年前の1867年で、当時は刺激的な小説だったんでしょう。

 主人公テレーズ(シモーヌ・シニョレ)は両親を亡くして叔母に引き取られ、叔母の息子カミーユと結婚します。病人の看護婦として嫁が必要だった、とテレーズが語っていますが、ひ弱な夫の面倒をみて一家の主婦、稼業である生地屋の店をきりもりする生活は、義母とカミーユの使用人同然の生活です。義母はひとり息子のカミーユを溺愛して妻であるテレーズに辛く当たり、カミーユは当然マザコン、夫婦の仲は冷め切っていると云う状態です。