村上龍は、破綻した日本を北朝鮮が侵略するという近未来小説『半島を出よ』や『五分後の世界』『歌うクジラ』などを読みましたが、同じ村上でも「ハルキ」と違って、時代を取り込んで悪夢を紡ぎだすというところが気に入っています。

 『イン・ザ・ミソスープ』は、師走の3日間、性風俗店のガイドであるケンジが、米国人のフランクと新宿歌舞伎町の歓楽街を彷徨う物語です。ケンジもフランクもありふれた名前で、アノニマスです。ケンジが案内する店は「覘き部屋」であったり「ランジェリーパブ」「お見合いパブ」などの日本の生々しい欲望の最前線です。