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BSシネマ シラノ・ド・ベルジュラック(1990仏) [日記(2013)]

シラノ・ド・ベルジュラック ジェラール・ドパルデュー Blu-ray
 ルイ13世の頃、近衛隊銃士シラノ・ド・ベルジュラックを主人公とした少し辛口のラブストーリーです。シラノ・ド・ベルジュラックというのは名前と「大鼻」だけ知っていましたが、実在の人物だそうです。ちょうどアレクサンドルデュマが『三銃士』で描いた時代の話しです。

 『三銃士』で銃士は、羽飾りの付いた大きな帽子に綺羅びやかな服装で腰には剣を吊り、年中酔っ払って喧嘩ばかりしています。シラノ・ド・ベルジュラックも同様、劇場で暴れまわったり、100人の敵を相手に大立ち回り。剣を振るう騎士を何故「銃士」と呼ぶのか不思議に思っていたのですが、何のことはない、彼等がマスケット銃で武装した騎士、兵士だからです。「30年戦争」の主要武器だったようです。たぶんマスケット銃は兵営保管で、街で暴れる時は剣だっらのでしょう。

 このシラノ・ド・ベルジュラック(ジェラール・ドパルデュー)と従妹ロクサーヌ(アンヌ・ブロシェ)の恋物語です。シラノはその大鼻のために自分の容姿にコンプレックスを持っています。街で大喧嘩をしたり劇場で役者をからかったりの傍若無人の振る舞いは、このコンプレックスの裏返しなんでしょう。豪傑ですから、近衛隊の同僚銃士には絶大な人気がありますが、「鼻」が話題となると狂ったように暴れます、やはり。

 じつは、シラノはこの従妹ロクサーヌに昔から恋焦がれているのですが、容姿を気にして打ち明けられずにいるという背景の下にストーリーは進行します。
 シラノはロクサーヌに好きな人できたと打ち明けられ、近衛隊に入隊するのでその彼氏クリスチャンを守ってほしいと頼まれます。よくあるパターンですね。シラノとクリスチャンの落差というのがこの映画のモチーフです。シラノは醜男で剣の達人、無頼漢ですが、詩人にして名文家。史実のシラノも詩集を出したり先駆的なSF小説を書いたり、哲学や物理学にも詳しいというルネサンス的文化人でもあったようです。ところがクリスチャンは、美形で喧嘩には強いが詩や作文が大の苦手。ロクサーヌを前にして気の利いた言葉ひとつかけることができず、キスしようと迫るだけ(笑。ここから、シラノがロクサーヌとクリスチャンの恋のキューピッドを演じる笑いと涙の物語が始まります。クリスチャンの手紙は全部シラノが代筆、バルコニーのロクサーヌにクリスチャンが愛を囁くシーンもシラノの代声?。シラノはロクサーヌに恋焦がれているのですから、手紙も甘い言葉もこれはもう本物です。クリスチャンという仮面を被らないと、ロクサーヌに愛を告白できないところに、シラノの悲喜劇があるわけです。ロクサーヌはその名文に、格調高い告白に酔いクリスチャンの虜となるわけです。

 このシラノを仲立ちとしたクリスチャンの恋は破綻を迎えます。クリスチャンは、ロクサーヌが愛しているのは現実の自分ではなく、シラノの書いた恋文やバルコニでの言葉の中に存在するクリスチャンであることに気づきます。クリスチャンは、まぁヤケを起こして前線に飛び込んで戦死します。

 恋文も、クリスチャンの口を借りた告白も、字幕を見ていると(仏語は分かりません)どうも時代がかった大仰なものです。エドモン・ロスタン作の五幕の韻文戯曲『シラノ・ド・ベルジュラック』(1897年)が元ネタの様です。セリフに韻を踏まなくてもよさそうなものですが、伝統的といえば伝統的。
 ロクサーヌはクリスチャンの死を悼んで修道院に引きこもり、シラノは15年間途切れること無く彼女の元を訪れます。そして、事故で目の見えなくなったシラノが、クリスチャンの恋文を読むのを見て、ロクサーヌは真実を悟るわけです。シラノに恋の成就が訪れるわけですが、時既に遅し、シラノには死期も訪れようとしています...。

 という古典的なラブストーリです。何処が面白いかと言えば、恋というものに潜む大きな誤解、あえて言えばその辺りですね。

 お薦めかというと、もうひとつです。ジェラール・ドパルデューは、『あるいは裏切りという名の犬』のほうが面白いです。

監督:ジャン=ポール・ラプノー
出演:ジェラール・ドパルデュー アンヌ・ブロシェ

タグ:BSシネマ
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