新撰組副長助勤、三番隊隊長、斎藤一の物語です。戊辰戦争をへて新政府の警察官となり、西南戦争を戦った(従って明治まで生き延びた)斎藤一が主人公です。「斎藤一」を逆に並べると「一刀(藤)斎」。斎藤の口述を記録した『夢録』という本の存在が子母沢寛の『新選組遺聞』に触れられているそうで、浅田次郎が夢想した『夢録』が本書ということです。

 浅田次郎は、盛岡藩脱藩?の吉村貫一郎を主人公に新撰組最盛期から鳥羽・伏見の戦いまでを描いた『壬生義士伝』、遊女糸里の視点で芹沢鴨暗殺を描いた『輪違屋糸里』を書いています。いずれも、斜めから見た「新撰組」物語です。もっとも、子母澤寛以下名著のたくさんある「新撰組」ですから、正面から書いても今更で、斜めから書かざるを得ません。
 斎藤一が近衛中尉・梶原稔に昔語りをする構成をとっています。