4年ほど前にblogに書いた記事の全面改稿です。原題:Incendies、火災、業火。レバノンからカナダに移住した姉弟が、母親の遺言に従って父親と兄を探し、レバノン内戦から立ち現れた真相は、という話です。



 幕開はカナダ、会話はフランス語ですからケベック州です。レバノン人のジャンヌとシモンの双子の姉弟は公証人から母親ナワルの遺言を伝えられます。遺言は、姉には父親を探し当て手紙を渡すこと、弟には兄を探しこれも手紙を渡すこと、手紙がそれぞれに手渡された後3通目の手紙が開封されるというものです。ふたりは兄の存在は知らず、父親は内戦で亡くなったと思っていたので、青天の霹靂。


 ナワルの物語が始まります。キリスト教徒のナワルは、レバノンの故郷でムスリムの男と恋に落ち男児を出産します。遺言にあったジャンヌとシモンの兄です。子供を孤児院に遣り、ナワルは街へ出て叔父の元から大学に通うことになります。1975年に内戦が勃発し大学は閉鎖され、ナワルは孤児院に送られた息子を探して旅にでます。キリスト教右派に彼女が乗ったバスが襲われ虐殺され、ナワルは十字架を掲げてひとり助かります。レバノン内戦は、キリスト教右派とイスラム教徒の武力衝突にレバノン国軍が鎮圧に乗り出し、PLO、シリア、イスラエルの周辺国を巻き込む地域戦争へ発展します。この辺りの詳しい説明はありません。『灼熱の魂』の主題は、憎悪が憎悪を生む内戦がナワルとその子供達に及ぼした悲劇を描くことですから、政治的背景はさして重要ではないのでしょうか。

 ナワルの息子は内戦の爆撃で生死不明。ナワルは宗教対立と内戦の元凶であるキリスト教右派の指導者を暗殺、政治犯収容所に収監されます。

 ジャンヌは、遺言に従い父親を探すため母親ナワルの足跡を追ってレバノンに向かいます。収容所の元監視を探し当て収容所での当時のナワルが明らかになります。ナワルは収容者番号72番、通称”歌う女”と呼ばれ、あらゆる拷問に耐え抜いた囚人だったのです。ナワルを歌えなくするために、収容所はアブ・タレクという拷問人を使い彼女を痛めつけレイプし、ナワルは身籠り出産します。ナワルの産んだ子供の消息を追って、子供を取り上げた看護師を探し出します。元看護師の証言によって、子供が双子だったことが明らかになり、ジャンヌの探す父親とは拷問人アブ・タレクだったわけです。

 シモンは、兄を探すために公証人とともにレバノンに向かいます。公証人はレバノンの同業者を通じ兄の探索を依頼し、孤児院を破壊したイスラム組織の指導者を突き止めます。指導者は、孤児達を連れ去り自軍の兵士として訓練し、その中にナワルの息子ニハド・ド・メがいたこと、息子は優秀な狙撃手となり今も生きていることを証言します。さらに、ニハドはナワルの収容された政治犯収容所の拷問人となっていることが明らかにされ、その名はアブ・タレク!。

 3通目の手紙が開封されます。そこには、兄ニハドはキリスト教徒とムスリムの愛よって生まれたこと、ジャンヌとシモンは「憎しみの連鎖」を断ち切る存在であることが記されています。


 で、どうなんでしょう?。『灼熱の魂』のレビューは


・星5つですが良い映画という意味ではなくある意味凄い!という意味です。

・あんな真相でなければいい映画だと思ったのだが

・プライムビデオで一番の衝撃作

・愛は物差しで測れないのです
・軽い気持ちで見ない事。落ち込んでる時には見ないように。


というものです。


監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:ルブナ・アザバル メリッサ・デゾルモー=プーラン マクシム・ゴーデット レミ・ジラール


【ドゥニ・ヴィルヌーヴ】

2009 静かなる叫び
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2013 プリズナーズ
    複製された男
2015 ボーダーライン
2016 メッセージ
2017 ブレードランナー 2049
2021 DUNE/デューン 砂の惑星