映画 カラヴァッジョ 天才画家の光と影(2007伊) [日記(2011)]
画家を取り上げた映画は『レンブラントの夜警』(ピーター・グリーナウェイ)、フェルメールを扱った『真珠の耳飾りの少女』、異端審問を扱った『宮廷画家ゴヤは見た』(ミロス・フォアマン)、モディリアーニの『モンパルナスの灯』(ジャック・ベッケル)を見ましたが、4作品ともなかなか面白いです。
レンブラント工房を主宰する隆盛と破産の両極端を生きたレンブラント、独特の光と贋作盗難に彩られた謎の画家フェルメール、華やかなスペイン宮廷画家として活躍の後黒い絵を書いたゴヤ、貧困と薬物中毒で命を縮め死後名声を高めた伝説の画家モディリアーニなど、画家(芸術家)とは一癖も二癖もある魅力的な素材です。
こんどはミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ。
私生活も派手で、枢機卿お抱え絵師となるも、売春婦をモデルとした宗教画を描いて物議をかもしたり、喧嘩と決闘に明け暮れて相手を殺してローマを逃げ、かの有名な『マルタの騎士団』に入ったものの又も同僚を傷つけて逃亡と、話題には事欠きません。
これに加え、バロックの先駆と云われる絵画は、レンブラント、フェルメールに受け継がれる光にあふれた作品で、その写実的な技法で見るものを飽きさせません。
このカラヴァッジョの絵画作成の秘密に、『地獄の黙示録』『ラストエンペラー』などで3度のオスカー撮影賞に輝いたヴィットリオ・ストラーロが挑んでいます。↓ の様なカラヴァジョの絵画の様な映像が随所に出て来て楽しめます。
映画ですが、
●ミラノでの修業時代(1571~1591頃)●21歳でローマに出てデル・モンテ枢機卿をパトロンに『聖マタイの召命』『聖母の死』を始め数々の宗教画を描くローマ時代(1592~1606)●決闘の末相手を殺しローマを逃れマルタの騎士団に潜り込み、またも上官と刃傷沙汰をおこしてマルタ島を逃れ、病に倒れ死ぬナポリ・シチリア時代1606~1610)
とカラヴァッジョの一生を忠実に再現して見せます。まぁほとんど恋と喧嘩です。この時代、貴族の庇護を受けたマエストロの権勢がどんなものか分かりませんが、いつも剣を携え喧嘩となるとこれを抜くんですからいずれは殺人も起きますね。そして恋の相手は高級娼婦。ルネサンス時代の高級娼婦の相手は王侯貴族、枢機卿に大商人、銀行家。娼婦というよりサロンの花の様な存在だった様で、この娼婦の取り合いから決闘となり相手を殺してしまいローマから逃亡します。大人げないというかすぐカッとなって剣を抜きます。こういう無頼漢とマエストロが共存する辺りを、ドラマとしてもう少し突っ込んで貰いたかったです。背景にヴァチカンのフランス派とスペイン派枢機卿の勢力争いがあるようですが、映画ではもうひとつ分かりませんでした。
画家の映画ですから喧嘩と恋いだけではなく、絵を描くシーンも頻繁に登場し、カラヴァッジョ絵画の秘密、画家の一生と密接な関係にある作品の秘密を解き明かしてくれます。
カラヴァッジョのリアリズムはモデルを使うところにあったようで、映画でも娼婦や市井の少女をモデルにマリアや聖女を描いています。また、行き倒れの死体を監察したり、断頭台やの処刑や火刑を熱心に見入るシーンを挟み、カラヴァッジョの写実の背景を描いています。有名な『聖マタイの召命』制作時に、窓から光が差し込み絵画を照らすシーンは象徴的です。ヴィットリオ・ストラーロはこの光を使った映像を各所に挟んでいます。
でお薦めかと云うと、イタリアとカラヴァッジョ、ヴィットリオ・ストラーロに興味をお持ちの方にはお薦めですが、映画としては今一歩かと。
聖マタイの召命
ホロフェルネスの首を斬るユディト 果物売り
聖マタイの召命 ダヴィデとゴリアテ
『ダヴィデとゴリアテ』のゴリアテは自画像だということです。
監督:アンジェロ・ロンゴーニ
撮影:ヴィットリオ・ストラーロ
出演:アレッシオ・ボーニ
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