映画 モールス(2010米) [日記(2012)]
原題は“Let Me In”。『ぼくのエリ 200歳の少女』(以下エリ)のリメイクです。 原作も読んでいるしオリジナル『エリ』も見ているので今更ですが、意外と面白かったです。こちらの方がホラー色がやや濃いです。
要するに、吸血鬼の少女と、12歳の少年の「一見」ラブストーリーです。12歳と云う大人でもないさりとて子供でもない少年少女を主人公にすることで、人間と吸血鬼が手を結ぶというホラーがラブストーリーに化けてしまいます。
トーマスは殺人に失敗し、累がアビーに及ぶことを避け顔を酸で焼いて正体を隠し、病院の窓から身を投げて死にます。トーマスを失ったアビーは、血を求めて吸血鬼となり骨をかみ砕き口から血を滴らせて人間を襲います。アビーに襲われて吸血鬼となった人間は、日光に当たって燃え上がります。「ホラー」ですが、この辺りの描写があって、吸血鬼アビーと人間であるオーウェンの切ない関係が生きてくるのでしょう。
オーウェンは、両親が離婚して母親と暮らしていますが、この母親が敬虔な、ちょっと度の過ぎたクリスチャンという設定です。面白いのは、この母親の素顔が全く写らないことです。つまり、顔のない母親と暮らしていることになります。さらに、オーウェンは学校で手ひどいイジメめに合っています。家庭と学校という、12歳の少年にとっては世界から閉め出されたにも等しいオーウェンと、日の光の下では生きられず、トーマスと共に隠れる様に各地を彷徨うアビー、ふたりの孤独な魂の(吸血鬼に魂があるのかどうか知りませんが)触れ合いというのが、『モールス』の枠組みです。
オーウェンはアビーが吸血鬼であることを知った時に、 「この世に絶対的な悪は存在するのか」と父親に電話で尋ねています。オーウェンはアビーが「絶対的な悪」であるという認識に立っているわけです。キリスト教国である西欧(原作はスェーデン)では、「悪」=反キリストという概念は、おそらく日本人が感じる以上の「邪悪」だと思われます。オーウェンはアビーがこの「絶対的な悪」であることを知りながら、アビーから逃れられず、アビーの虜となってしまいます。「絶対的な悪」よりも孤独な魂の救済が優先されたわけです。
アビーは虐めにあっているオーウェンを励まし、オーウェンを虐める少年達を殺し、オーウェンの保護者、主人となります。
オーウェンは、アビーの部屋で若いトーマスとアビーの写った写真を発見します。トーマスもまた少年時代からアビーの崇拝者であり下僕として仕えていたのでしょう。ラストシーンで、オーウェンはアビーの入ったトランクとともに暮らしていた街を離れ流浪の旅に出ます。トーマスの継承者としてアビーに仕える崇拝者となったのです。
アビーは虐めにあっているオーウェンを励まし、オーウェンを虐める少年達を殺し、オーウェンの保護者、主人となります。
監督:マット・リーヴス
出演:コディ・スミット=マクフィー クロエ・グレース・モレッツ イライアス・コティーズ リチャード・ジェンキンス
茶色い照明の中庭とか雰囲気があって良かったですが、
「エリ」より派手なシーンは閉口。
by k_iga (2012-10-20 11:39)
オリジナルよりホラー色は濃いですね。吸血少女と少年の関係をより鮮明にするための演出だと思います。
by べっちゃん (2012-10-20 11:56)