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BSシネマ シャイン(1996豪) [日記(2013)]

シャイン ―デジタル・レストア・バージョン― [DVD]
 ジェフリー・ラッシュがアカデミー賞をもらった映画とかで、見たいと思っていたところ都合よくBSで放映されました。オーストラリア実在のピアニスト、デイヴィッド・ヘルフゴットの物語です。普通の音楽映画と異なるところは、このピアニストがパニック障害を患っていることです。

 冒頭、雨の日にいきなりジェフリー・ラッシュが現れて精神病を思わせる独特のしゃべりで度肝を抜きます。この人物がデイヴィッド・ヘルフゴットで、どうなるんだろうと思っていると彼の少年時代から物語は始まります。
 映画は、父親ピーター(アーミン・ミューラー=スタール)の溺愛ぶり、少年時代のデイヴィッドの天才ぶりを描きます。ヘルフゴット家はユダヤ系のポーランド移民で、デイヴィッドの祖父母はナチの収容所で亡くなった父親によって説明されています。そのことと関係があるのかどうか、父親は家族というものに異常に執着し、デイヴィッドを溺愛します。デイヴィッドを手放したくない父親はアメリカからの留学の話も断ってしまいます。父親はデイヴィッドの才能の最初の発見者で教師なのか、単なる暴君なのか、デイヴィッドのパニック障害の原因がこの父親にあるのか、よく分かりません。ラストシーンが、父親の墓参りといゆのも何か意味深長です。

 デイヴィッドと父親をつなぐ因縁の曲が、難曲といわれるラフマニノフのピアノ協奏曲第3番。父親はデイヴィッドの為にこの曲の指導を音楽教師に頼んで断られています。ロンドンの王立音楽大学に留学したデイヴィッド(ノア・テイラー)は、このピアノ曲に挑戦し、大学のコンクールか何かで演奏し、演奏し終わった途端倒れてしまいます。
 ピアノ協奏曲第3番がパニック障害のトリガーとなりデイヴィッドは精神病院に入ります。何故引き金となったか、何故「ラフアマニノフのピアノ協奏曲第3番」であるかについての説明はありません。少年時代にデイヴィッドがこの曲を弾きたいと父親に言ったこと、父親がピアノ教師に指導を頼み少年向きの曲ではないと断られたこと、音楽大学で教授に就いて練習し弾きこなせるようになったこと、描かれているのはこの3点です。
 デイヴィッドは父親の反対を押し切ってロンドン留学を果たしていますから、父親が望んだピアノ協奏曲第3番を弾くことで父親との約束を果たし、緊張の糸が切れて元々その気があったパニック障害が吹き出したのでしょう。この父親⇒ ピアノ協奏曲第3番⇒デイヴィッドの関係を、もう少し掘り下げて描いて欲しかったと思います。父親は独学でピアノとバイオリンを学んだと言っていますから、このピアノ協奏曲第3番に挑戦し挫折したのかもしれません。自分が弾けなかった曲を、才能ある息子に託したのでしょう。

 精神病院を出たデイヴィッドは、バーでピアノを弾き始めます。アルバイトとかなんとかではなく、そこにピアノがあったからです。ここからは平板で、後の妻ギリアンがバーに登場し、ふたりは愛しあうようになって結婚します。ギリアンを媒介として世間と接触できるようにデイヴィッドは、ピアニストとして復帰しメデタシめでたし。ギリアンとふたり父親に墓参するシーンで幕。

 『シャイン』は、父親⇒ ピアノ協奏曲第3番⇒デイヴィッドの関係を描いた映画だと思うのですが、正直その意図と実態が分かりません。父親の保護下にある子供が、己の才能によって父親の重圧を撥ねつけて自立してゆく、とも考えたりもするのですがチョット違う。どうもよく分からない映画です。いろんな賞の作品賞にノミネートされて受賞に至っていないのは、そのあたりかもしれません。
 
 ジェフリー・ラッシュがアカデミー賞、ゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞の各主演男優賞を獲得ています。確かに達者なものです。ハンディーを負った人物の演技はこういう「賞」と縁があります。『レインマン』のダスティン・ホフマン、『ビューティフル・マインド』のラッセル・クロウ、アル・パチーノは『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』盲目の元軍人、『カッコーの巣の上で』のジャック・ニコルソンはロボトミー。それだけ演技力が要求されるんでしょうね。ジェフリー・ラッシュは『パイレーツ・オブ・カリビアン』バルボッサ船長だけではないんですね。
 個人的には、青年時代のデイヴィッドを演じたノア・テイラーにも一票。 監督は『ヒマラヤ杉に降る雪』、『幸せのレシピ』のスコット・ヒックス(どちらもお薦めです)。
 
 で、お薦めかと言うと、私のようにプロット重視の映画ファンにはあまりお薦めできません 。アカデミー賞のジェフリー・ラッシュの演技を見たいという方、クラシック・ファンの方のであれば楽しめるかもしれません。
 
監督:スコット・ヒックス
出演:ジェフリー・ラッシュ ノア・テイラー アーミン・ミューラー=スタール

タグ:BSシネマ
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