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ドラマ クライマーズ・ハイ(2005日) [日記(2013)]

クライマーズ・ハイ [DVD]
 映画の方ではなくNHKのドラマの方です。映画版を見たのですが今ひとつピンと来ないので、映画より評判がいいコッチの方を見てみました。小説という濃密な世界を体験してから映画を見ると、だいたい80%くらいの確率で期待はずれに終わりますが、さすがNHKしっかり作ってあります。

 本を読んだ感想では、「大久保・連赤」「日航機墜落事故」にまつわる新旧世代の確執について書きました。ドラマを見て、父親と息子もこの新旧世代の関係に当たることに気付かされました。新聞社の新旧世代にこの親子関係を重ねた演出はなかなかよかったです。
 主人公・悠木(佐藤浩市、日航全権デスク)を中心に、後ろには「大久保・連赤」世代の追村(編集局次長)、等々力(岸部一徳、社会部長)、前には「日航機墜落事故」の新世代である佐山(大森南朋、県警キャップ)、神沢(社会部記者)、玉置(地域部記者)がいるだけではなく、悠木の左右には息子の淳、亡くなった親友の安西燐太郎がいます。当たり前の話ですが、われわれは様々な世代に囲まれていきているわけです。そして、若い世代はかつての自分であり、古い世代はこれからの自分です。『クライマーズ・ハイ』の世界で世代は、等々力 →悠木 →佐山 →淳と続いてゆくわけです。

 世代とはある記憶を共有するグループだと考えてもいいでしょう。そして、その共有する記憶を次の世代に渡してゆく役目も担っているわけです。この映画(小説)では、等々力と悠木が対立し(それは、ものの捉え方考え方の対立でもあるのですが)悠木と佐山が対立し、悠木と淳が対立します。
 悠木は、地元紙であるにもかかわらず、北関東新聞は、「大久保・連赤」事件で全国紙に「抜かれた(遅れをとった)」と等々力を批判します(「大久保・連赤」事件は群馬で起こった事件です)。等々力は、酔いつぶれながら、地方新聞の記者として地元の事件で全国紙に「抜かれた」とは意地でも言うなとつぶやきます。等々力も、そして悠木と同世代の岸(政治部デスク)も田沢(社会部デスク)も「抜かれた」ことを暗黙に認めていながら、新聞記者としての意地で何時かは抜き返そうと思っているわけです。ドラマでは、この等々力の記者魂、プライドと倫理観が、対立しながらも悠木や佐山に受け継がれていることが伝わってきます。映画版では、等々力たち「大久保・連赤」に寄りかかる姑息な存在として描かれています。

 日航機墜落事故の1985年当時、悠木と息子の淳は対立しています。対立と云うより、父親が蒸発したという過去を持つ悠木は、「息子とどう付き合っていいのか分からない」ということの様です。悠木 →淳の世代間の引き継ぎをどのように描くかです。
 20年後の2005年に悠木は親友の息子・安西燐太郎と谷川岳の衝立岩を登ります。オーバーハングで悠木は落ちてザイルにぶら下がります。60歳の悠木は、1本のハーケンに助けられ無事オーバーハングを乗り越えますが、このハーケンは悠木のために事前に淳が打ち込んだハーケンでした。つまり、等々力 →悠木 →佐山 →淳と、男達の誇りは世代から世代へ受け継がれたわけです。小説を読んだ時、このハーケンのエピソードは「いかにも」という風に感じたのですが、ドラマを見て納得しました。

 NHKですから、ドラマの中に自局が放映したテレビニュースを多数使っています。映画の方は現場をセットで再現していますが、リアリティーということではドラマの方が上です。20年後に作られた映画ですから、何も現場を再現する必要は無いわけで、事故当時を知っている視聴者には、このニュース映像の方がインパクトがあります。ドラマ自体も、2005年から20年前の1985年8月12日を振り返るという設定になっています。このリアリティということでは、新聞社の社内のスチールデスクに雑然と書類が積まれた風景が1980年台をよく現していました。30年前の自分のオフィスを見るようで懐かしかったですね。そう言えば、書類を送るパイプまでありましたが、これには感心しました。

 ということで、『クライマーズ・ハイ』を映像で見るならNHKドラマの方です。

演出:清水一彦 他
出演:佐藤浩市 赤井英和 大森南朋 松重豊 光石研 岸部一徳 杉浦直樹

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