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吉村昭 桜田門外ノ変 新潮文庫 [日記(2006)]

桜田門外ノ変〈上〉

桜田門外ノ変〈上〉

  • 作者: 吉村 昭
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1995/03
  • メディア: 文庫

 桜田門外ノ変は、勅許を得ず諸外国と条約を結んだ大老井伊直弼の暗殺事件である。教科書的には、天皇をないがしろにし洋夷と結んだ井伊直弼を、尊王攘夷の思想を持つ水戸藩士が天誅を下したということだが、根はもっと深い。安政の大獄による水戸藩弾圧(水戸藩は尊王攘夷思想の卸し元)に対する反撃、特に水戸藩へ下された勅許の強引な返還問題(幕府の横槍)、水戸藩内部の保守派と急進派の暗闘などがある。弾圧により同志が減った急進派(尊王攘夷派)が、井伊直弼を消すことによって時代を回転させ自派の地位回復を図ろうとしたとも考えられる。

 作者は、襲撃指揮者である関鉄之介の視線で、暗殺計画、戦闘場面、事変後と事実を淡々と積み重ねる。小説のページ配分から、事変後の話が作者の意図であろうか。暗殺は成功したが時代は回転せず、暗殺と同時に京都で天皇を抱き込み天下に尊王攘夷の旗を掲げる予定であった薩摩藩は動かず、突出した形となった暗殺者達は「梯子を外され」、古巣水戸藩からも追われる犯罪者となった。

 暗殺に加わった人々のその後は悲惨である。

◆後方支援部隊
高橋多一郎 47歳 首謀者 事変後大阪で取手に囲まれ自刃
高橋荘左衛門 19歳 多一郎の息子 同上自刃 
金子孫次郎 58歳 副首謀者 大阪で捕縛、江戸送りの後斬首
佐藤鉄三郎 25歳 連絡係 追放

◆暗殺実行部隊 18名
岡部三十朗 44歳 検視見届役 斬首
関鉄之介 35歳 襲撃指揮者、本書の主人公、逃亡後捕縛され斬首
稲田重蔵  47歳 桜田門外で惨殺
斎藤監物  自訴 斬首
黒沢忠三郎 自訴 斬首
蓮田市五郎 29歳 自訴 斬首
森五六朗  24歳 自訴 斬首
大関和七朗 26歳 自訴 斬首
森山繁之介 27歳 自訴 斬首
杉山弥一郎 自訴 斬首
山口辰之介 自刃
鯉淵要人 自刃
広岡子之次郎 自刃
佐野竹之介 事変後深傷で死亡
広木松之介 23歳 逃亡の後自刃
増子金八 逃亡 明治14年死去 60歳
海後さ磯之介 明治36年死去 76歳

薩摩藩士
有村 井伊の首級を挙る 自刃

 生き残ったのはたった二人。明治維新が来るのは、事変のわずか8年後である。

小説としては少し起伏に欠けるか? →☆☆☆★★


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