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トーマス・フリードマン フラット化する世界(上) [日記(2007)]

フラット化する世界(上)

フラット化する世界(上)

  • 作者: トーマス・フリードマン
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
  • 発売日: 2006/05/25
  • メディア: 単行本


 『web進化論』と共に、ITによって世界が質的な変化を遂げつつあることを説いたルポルタージュです。冒頭で著者は、地球が丸いことを信じて西に航海し、アメリカ大陸到達してしインドと思いこんだコロンブスを枕に、現代のコロンブス(著者)は、インドで『地球がフラット』であることを発見した、と書きます。ITの発達によって、インドが世界のソフトウェア工場、コールセンターとなり、一大アウトソーシング基地ととなっていることを指して、地球がフラット化しつつあると云います。flatと云う単語には均質と云う意味がありますから、丸い地球がフラット化する云うのは掛け言葉で、『平坦に均されている均質化する地球』と云う意味です。
 パソコン操作に困ったイギリス人がコールセンターに電話すると、キングス・イングリッシュでインド人が答えてくれると云うのは有名な話です。インターネットの発達と人件費の差、豊富な人材を抱えるインドが、英語圏のコールセンター、ソフトウェア工場となっている現実をルポし、フラット化を説き起こします。
 イラク紛争では、危険地帯上空を無人偵察機が飛び、偵察機の映像を現地米軍アナリストだけではなく現地の将校、ペンタゴン、CIAまで情報を共有化できると云うのです。一部の権力者だけの占有物であった情報が、多くの関係者の共有となります。命令系統に変更が生じることはないでしょうが、情報の共有化は『内部牽制』となり、組織に於ける権力者の暴走に歯止めがかかるというメリットを生み出します。著者は、ヒエラルキーのフラット化が生じ、組織が「トップダウンの構造から水平な共同作業へ」と自らを変容させつつあるととらえます。keyワードはおそらく『オープン』と云うことでしょう。

 続いて著者は、こうしたフラット化した世界の出現は何によってもたらされたのかを第2章で説きま明かします。『世界をフラット化した10の力』とは

要因1 ベルリンの壁の崩壊と、創造性の新時代 →これは想像つきますね。

要因2 インターネットの普及と、接続の新時代 →これも想像つきますね。

要因3 共同作業を可能にした新しいソフトウェア →HTML、HTTP、TCP/IP、XML、SOAP などです。

要因4 アップローディング:コミュニティーの力を利用する →アパッチ、ウィキペディア、linuxです。

要因5 アウトソーシング:Y2Kとインドの目覚め →アメリカのY2Kをクリアしたのはインドだった。Y2Kで培った技術と信用がその後のアウトソーシングを呼び込んだ。

要因6 オフショアリング:中国のWTO加盟  →WTO加盟によって中国は「中国に売る」「中国で作る」「中国で設計する」「中国で構想する」国に変貌した。

要因7 サプライチェーン:ウォルマートはなぜ強いのか →POSシステムやRFIDタグなどITを駆使したウォルマートのサプライシステムは、中国において「ウォルマートを1国の経済だと見なすと、貿易高はロシア、オーストラリア、カナダをしのいで第8位にあたる」。

要因8 インソーシング:UPSの新しいビジネス →東芝にノートパソコンの修理を依頼するとUPSが基盤を入れ替えて自宅に届けてくれ、ナイキに発注したシューズはUPSの倉庫から配達される、だそうです。

要因9 インフォーミング:知りたいことはグーグルに聞け →これは説明の要無しですね。

要因10 ステロイド:新テクノロジーがさらに加速する。 →ワイヤレス・テクノロジーがすべてを「デジタル、モバイル、バーチャル、パーソナル」にする。

 このフラット化した世界を、著者は自由にプラグ&プレイ出来る水平な新「競技場」と呼びます。そして何よりもすごいのは、かつてこの競技場はもっぱら西側諸国の企業と個人が「プラグ&プレイ」する場所であったが、今や「安価ですぐ手に入るワークフロー・ツール」使って中国、ロシア、東ヨーロッパ、ラテンアメリカ、中央アジアの30億人が参加する競技場となった、ということです。アルビン・トフラーが予言した「第三の波」がグローバル化の波となって世界を覆おうとしているわけです。なんともすごい世の中となったものです。


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