映画『スパイ・ゾルゲ』の無線機 (1) [日記(2008)]
篠田正浩監督『スパイ・ゾルゲ』オフィシャルページ
映画『スパイ・ゾルゲ』を観ました。スパイ活動に無線通信は欠かせませんが、boatanchorファンとして幾つか面白い場面があったので、感想文とは別に追記します。
版権の都合で画像を載せられませんが、個人で的に面白い描写があるので書いておきます。
(1)宮城与徳、マックス・クラウゼン 真空管を買う
無線通信機を組み立てるために、露天で真空管など部品を買い求めるエピソードがあります。真空管とバリコンを買っています。真空管は試験器に挿してみて性能を確認して買って買っています。真空管のヒーターがほんのり点灯しますが、なかなか芸の細かい描写です。真空管も『茄子管』と云われるものですね。当時は(今でもヤフオクは似たようなものですが)真空管は試験してみ買ったのでしょうか?
(2)ゾルゲの無線設備
この映画のオフィシャルページにゾルゲとマックス・クラウゼンが無線通信をする画像があったと思います。コイルがむき出しになった送信機とプラグインコイルのようなものを付けた受信機が見えます。この送信機は他の場面でも出てくるのですが、受信機の全貌が拝めません。IFTが付いていないからオートダイン受信機でしょうか?(3)到達距離は4000km
無線機を前に、 『(電波の)到達距離は?』と聞かれて、ゾルゲは『最高記録は4000km』と答えています。訳はおかしいですが、電波を4000km彼方に飛ばす必要がある、と理解できます。東京からモスクワまで電波を届かせるとすると、当時の技術では大がかりな装置が必要となります。4000kmといえばハバロフスク辺りかなと思われます。
(4)電波傍受
方向探知機用のアンテナ、特高(警察)の不審電波傍受装置(受信機)が出てきます。この場面に米ナショナル社の受信機HROが写ります。側にプラグイン・コイルもありますから芸が細かいです。HROは1934年から製造ですから納得ですが、これはHRO-5ではないでしょうか、なら1944年~の製造ですから時代が合わないようにおもうのですが。軍用受信機の『地一号』に似た雰囲気の受信機や扇型ダイヤルを持ったちょっと戦後の民生用受信機に似た受信機も写ります。雰囲気出ていますね。
HRO-5
(5)移動送信
警察の不審電波傍受で発信地を突き止められないよう、車で移動して送信しています。クラウゼンが右太ももに電鍵をくくりつけて送信しますが、軍用に太ももに固定する移動専用の電鍵があったと思います。よく出来ています。ここまで凝るとは、相当詳しいスタッフの存在が想像されます。移動用アンテナまであって、ヴィケリッチがアンテナの支柱を持って立ちます。垂直アンテナでしょうか?
(6)おまけのライカ
ゾルゲがドイツ大使館で書類を複写するのに使います。当時の最高級品、定番。ゾルゲはドイツ人なのですから何の不思議もありませんが。
次は、ゾルゲの無線機を真空管、周波数辺りから推理してみたいと思います。 →(2)に続く
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