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再読 ダヴィンチ コード(1) [日記(2009)]


ダ・ヴィンチ・コード(上) (角川文庫)

ダ・ヴィンチ・コード(上) (角川文庫)

  • 作者: ダン・ブラウン
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2006/03/10
  • メディア: 文庫


 『マグダラのマリア』が面白かったので、『ダヴィンチ コード』を再読しました。日本で1000万部売れたとかで、ミステリーファン方なら大抵読んでおれれるのではないかと思います。興味があったのは、イエスの血脈がどの様に描かれているか?です。

本書の魅力、読者の想像力をかき立てる秘密とは

・レオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』の謎
・『聖杯伝説』に係わる謎
・オプス・ディ、シオン修道会などの秘密結社の謎

 この3つだと思われます。そして、本書でこの謎に明快な回答を出すのが、イギリス人の聖杯研究家リー・ティービングです。

 ここで語られる『聖杯の謎』がおそらく本書でいちばん興味をひくところではないでしょうか。本書の中核を成しているともいえます。 ティービングは、ローマ皇帝コンスタンティヌスによって開かれたニケーア公会議から説き起こします。ここで現在のキリスト教(カトリック)の基礎が出来上がったわけです。会議によって数ある福音書からマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネによる4つの福音書が採択され、『ナザレのイエス』が『神の子』となり、正統と異端が決められました。現在まで続くローマカトリックとはある意味でこの会議で捏造されたものである、というわけです。この時異端とされた福音書が死海文書、ナグ・ハマディ文書として20世紀に発見されます。
 ティービングが語るこのシーンは、次のダ・ヴィンチ『最後の晩餐』の謎を提起するマクラです。ニケーア公会議で切り捨てられたイエスの物語が『最後の晩餐』には描かれている、ということです。

 ティービングは、イエスの右隣に描かれているヨハネに擬された人物こそ『マグダラのマリア』であり、エイスと形づくる\/ゾーンこそが『聖杯』すなわち子宮の象徴であると説きます。さらに、マリアとイエスを加えると|\/|=Mとなり『マグダラのマリア』『結婚』をも象徴し、『(マグダラの)マリアによる福音書』へと話がつながってゆきます。イエスの血を受けた『聖杯』とは、『イエスの聖なる血脈を宿した子宮』ということになります。そのイエスとマリアの物語と家系を記した文書が『サングリアル文書』として何処かに眠っている、らしいのです。『サングリアル文書』を入れた櫃が『聖櫃』となり、『聖櫃』を手に入れたテンプル騎士団、イエスの血を守るシオン修道会の伝説へと発展します。
 ヴァチカンが葬り去った『マグダラのマリア』は、確かに絵画や物語、詩として定着し語り次がれ、ダ・ヴィンチはヴァチカンの欺瞞を『最後の晩餐』に描き込んだのですね。

 何故聖杯がこれほど重要視されるかというと、この聖杯でワインを飲むと永遠の命を授かるという伝説があるからです(インディー・ジョーンズ『最後の聖戦』にも出てきますね)。

 『最後の晩餐(1498年)』はキリストと12使徒を描いたものですが、マグダラのマリアを描けば13人となります。ヨハネは何処にいったんだ?ということになります。修道院の食堂の壁画にあからさまな表現は出来ません。ダ・ヴィンチは仕事を請け負った画家ですから、パトロンの意向を無視することは出来ないでしょうから、12使徒の中の一番若いヨハネにマグダラのマリアのイメージを重ねたのでしょう。『岩窟の聖母(1483年)』で前科1犯(書き直しをさせられた)のダ・ヴィンチは、慎重に事を運ぶ必要もあったのです。

 イエス磔刑の時マグダラのマリアは妊娠していた、というから驚きます。その後マリアはイエスの母・マリア(マリアという名前は当時最もありふれた名前)とともに南フランスへ去り、なんとメロヴィング朝を立て、イエスの血脈は現代に受け継がれている。荒唐無稽というかファンタジーですね。

 このファンタジーを、イエスの血脈を守る側(シオン修道会)、神の子であるイエスが妻子を持つ普通の男であっては困る側(オプス・デイ)、双方の『聖杯』争奪戦をミステリーとして描いたのが『ダヴィンチ コード』です。そして現代のイエスの血脈が、ラングドンとともにこの謎に挑戦するソフィーであり、聖杯を守ることがソフィーを守ることですから、出来すぎているとというか、なかなかうまい設定です。ジャック・ソニエールはシオン修道会の総長ということになっていますが、過去の総長として、ニュートン、ボッティチェルリ、ヴィクトル・ユゴー、ジャン・コクトー、そしてダ・ヴィンチがいるというのです。シオン修道会の真贋は別として、こういうのは楽しいですね。

ここまでが、ダン・ブラウンが仕組んだ舞台です。次に、この舞台の上で物語がどのように展開されるか観てみます。
(2)へ続く


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