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スパイ・ゾルゲを読む コミンテルン [日記(2009)]

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ソ連で発行された切手。1964年、ゾルゲはソ連邦英雄となりました。

 ゾルゲは1925年1月にモスクワ入りし、コミンテルン情報局(諜報)に入っています。上海、東京で諜報活動をしたゾルゲを考えるうえで、コミンテルンとゾルゲがコミンテルンを如何に理解していたかを知る必要があると考えます。

1)一般的な概説(wikipedia参照)

【第1次インター、第2次インター】
 コミンテルンは1919年モスクワで結成された共産主義の国際組織です。
 前身は1862年にロンドンで結成された国際労働者協会(第1インターナショナル)で、かのマルクスが創立宣言を書き、ヴィクトル・ユゴー、バクーニンらが参加していますが1876年に内部分裂で崩壊します。
 1889年には、再度国際的な労働組合運動の組織化をめざし第2インターナショナルが設立されます(参加20カ国)。この第2インターにはロシア代表としてレーニン、ポーランドからはローザ・ルクセンブルグなどが参加しています。1907年の『シュトゥットガルト決議』では、軍備の縮小、戦争勃発の阻止や、主本主義の廃絶などが決議されていますが、主導的役割を果たしたドイツ社会民主党の分裂で、第2インターそのものが又も崩壊してしまいます。

【コミンテルンの創立】
 1919年、第2インターを引継ぎ、レーニンが率いるロシア共産党(ボリシェヴィキ)の主導のもとに30カ国が参加しコミンテルンが結成されます。コミンテルンを主導したのはレーニン、トロツキーで、グリゴリー・ジノヴィエフが議長を勤め、日本からも片山潜が参加ています。1919年時点では、十月革命(1917年)でロシア革命を経てソ連が世界で唯一の共産主義国家(十月革命は917年)であり、他の30カ国は資本(帝国)主義国家の共産党に過ぎません。ソ連は世界に共産主義を敷衍し世界のソヴィエト化を目指し、その他の国の共産党はソ連の援助によって自国をソヴィエト化しようと云う構図です。国際組織であるいコミンテルンはソ連を盟主とすると云う限界を、その発生から持っていたことになります。

【一国社会主義】
 コミンテルンの性格を大きく左右したのが、1924年のレーニンの死去です。レーニンから権力を受け継いだスターリンは、コミンテルンをバックアップするソ連の政策を、『一国社会主義』へと大きく変えます。スパルタクス団の蜂起、ハンガリー・ソビエト共和国の失敗、ファシズムの台頭が、スターリンに危機感を抱かせたわけです。ソ連の政策は『世界革命』から『ネップ(新経済政策、後の5カ年計画)』へと舵を切ります。ネップを推進したのはブハーリンで(裏にスターリン)、レーニンの死後ブハーリンは政治局員に昇格し、1926年にはコミンテルンの議長に昇格しています。ブハーリンとともに第六回コミンテルン大会(1928年)にかかわったゾルゲは、スターリン派としてトロツキー追い落としに係わっていたとも云えます。

 1930年代に入ると、スターリンによる『大粛清』が始まり、ソ連国内及び海外にいたコミンテルン活動家もその対象となってゆきます。コミンテルンのスタッフメンバー492人の内133人が粛清の犠牲者になり、ナチスドイツから逃げたり、ソ連国内に呼び込まれた数百人のドイツ人の共産主義者と反ファシズム主義者は粛清され、また1000名以上がドイツに送還させられています。1934年にはキーロフが暗殺され(命じたにはスターリン)、1936年には創立いらいコミンテルンの議長を務めたジノヴィエフが処刑されます。
 粛清はコミンテルンに止まらずあらゆる組織・階層に及び、1937年~1938年には赤軍の大佐以上の高級将校の65%が粛清されたといわれています。

 ゾルゲがモスクワに到着し、コミンテルン情報局書記局員となった1925年1月とは、レーニンの死後コミンテルンの方針が変化を始めた時期であり、大粛清の始まる前の1931年に上海に向かい、粛清の嵐が吹き荒れた最中は東京にいたことです。ゾルゲがソ連国内に止まっていたなら、粛清に巻き込まれて処刑されたかラーゲリで死んで居た可能性は大きいです。
 ブハーリンのもとで第6回コミンテルンの大会を運営していますから、このコミンテルンの変質は知っていたはずでありゾルゲがコミンテルン情報部から赤軍第4部に移った経緯も、コミンテルンの変質とは無関係では無いはずです。また、大粛清の始まる少し前1935年7月にモスクワに一時帰国していますから、粛清の予感を感じた筈です。1938年のブハーリンの処刑をゾルゲは東京で聞いたはずです。このあたりのゾルゲの心の揺れも興味が湧くところです。

 次に、ゾルゲはコミンテルンについてどう考えていたのか、を考えてみます。




タグ:ゾルゲ
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