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映画 扉をたたく人(2008米) [日記(2009)]

扉をたたく人 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 東宝
  • メディア: DVD
 映画では2組のカップルが登場しますが、4人の人種がアングロサクソン(おそらく)、アラブ、アフリカンなんですから、アメリカという国は凄いなというのが実感です。この映画の抱える主題は、ひとつが9.11以降に臆病となったこの国の偏見、もうひとつがその偏見の渦中で自己を取り戻してゆく人間の姿でしょう。

 最初の主題です。原題はVisitor、意味深長な題名です。初老の大学教授ウォルターのアパートに住んでいた、シリア人のタレクとその恋人のセネガル人ゼイナブはVisitorです。積極的に移民を受け入れてきたアメリカという国にとっては、不法滞在ですがこの二人もVisitorの筈です。詐欺にあってウォルターのアパートに住んでいた二人をかれはホストとして迎い入れます。しかし、もう一方のホスト・アメリカは不法滞在を理由にタレクを入管に隔離し強制送還しようとします。個Vs.個、個Vs.国家権力の関係の違いでしょう。

 ジャンベという楽器が登場します。二つ目の主題は、このジャンベによるウォルターとタレクの交流です。ウォルターは地方の大学の教授。それも、締切を過ぎて提出された学生の論文を受け付けない、狷介な教授として登場します(私も経験あり・・・笑)。冒頭でピアノを習っていますが、ジャンベ(民族楽器)Vs.ピアノ(クラシック)という構図もあります。奏者のタレクにジャンベを習うことによって、かたくなに閉じられていたウォルターの心が徐々に開かれます。この辺りのリチャード・ジェンキンスの演技は特筆もので、彼の演技なくしてはこの映画は成立しなかったかもしれません。アカデミー賞主演男優賞ノミネートも頷けます。セントラルパークで、多くの“Visitor”とともにジャンベをたたくウォルターの姿はひとつの山場でしょう。

 徐々に開きつつあったウォルターの心の扉を、大きく開いたのはタレクの母モーナの出現です。妻を失って孤独をかこってきたウォルターが、老いらくの恋とはいえ美しいモーナに心を奪われるのは、まぁ仕方がないことでしょう。二人でブロードウェイに行った帰りに、ウォルターはモーナに告白します。自分は20年間同じ講義ノートを使ってきた、

I pretend(振りをしている)。
忙しい振り、働く振りで、実は何もしていない。

こういう教授、いましたね。この告白で、ウォルターは、自分に対しても閉ざしていた扉をひらいたのでしょう。これは重要なことです。

扉をたたいたのは誰なのか?そして扉を開いたのは誰なのか?扉をたたいたが、扉を開いてはくれなかったのは誰なのか?。

地下鉄のホームで、電車の騒音に抗うかのようにジャンベを叩くウォールターの姿で幕となります。
地味な映画ですが、お薦めです。

監督:トム・マッカーシー
出演:
リチャード・ジェンキンス
ヒアム・アッバス


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