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映画 トニー滝谷(2004米) [日記(2010)]

トニー滝谷 プレミアム・エディション [DVD]

トニー滝谷 プレミアム・エディション [DVD]

  • 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
  • メディア: DVD
 あまり邦画は見ないのですが、原作が村上春樹だというので見てみました。村上春樹の小説が映画になるのか?という興味です。
 村上春樹の短編集『レキシントンの幽霊』に収められた『トニー滝谷』の映画化です。小説もそうでしたが、トニー滝谷の履歴、彼の妻との生活、妻の死後のエピソード、時代も場所も非現実な空間で抽象化された配役が、『服』という象徴性のまわりを巡ります。

 小説を読んだときも思ったのですが、トニーの妻英子がひたすら買い求める『服』とは何か?です。映画でも『自分に足りないものを埋めてくれる』と宮沢りえが言っていますが、これでしょうね。トニーは自分の心の空隙を埋めるように英子と結婚し、英子もまた心の隙間を埋めても埋めても埋めきれず、服を買い続けます。【トニー ⇒ 英子 ⇒ 服】こんな構図でしょうか。

 英子が死んで、トニーはひさ子によってその隙間を埋めようとしますが、結局、その徒労に気づき服を売りはらいます。ひさ子は、何百着もの英子の服を目の前にして泣きますね。ひさ子は、中毒のように服を買う英子の孤独ために泣いたのでしょう。このひさ子の涙によってトニーはひさ子を英子の身代わりにする無意味さに気づき、服を売りはらうことができたのだと思います。

 ラストでトニーはひさ子に電話します、結局はつながりません。原作がどうだったか忘れましたが、これはトニーが過去を吹っ切り次の一歩に踏み出」そうとしたのでしょう。

 そもそも、村上春樹の小説が映画として成り立つのかどうか心配しましたが、『トニー滝谷』は長編に比べ主題がはっきりしていますから、少し楽だと思います。小説で主題がはっきりしていることと、それを映像で表現することとはまったく別でしょうが、映画『トニー滝谷』は成功した方だと思います。たぶん、セリフをほとんど無くし、身体で演技ができるイッセー尾形、宮沢りえという俳優を起用したことが成功の要因かと思われます。英子とひさ子を宮沢りえが二役でこなしいてますが、これも監督のたくらみですね。

【原作と映画について】
 原作と映画、どちらを先に読むか見るかによって原作あるいは映画の評価は変わってきます。映画が原作の理解を助けたりその逆であったり、原作の方がおもしろかったり又その反対であったりしますが、映画と原作は別物と理解した方がいいようです。
 古いものですが『砂の器』(原作:松本清張の社会派ミステリー、映画:野村芳太郎)思い出しました。これは映画を見て感動し原作を読んだのですが、映画は殺人事件の背景に、戦争による時代の混乱と古きよき日本社会や美しい四季を取り入れることによって大きな成功を収めました。松本清張の原作も面白いのですが、野村芳太郎は原作の枠組みを借りて自分の世界を描いて成功したと思います。
 有名な『ブレードランナー』の原作はF・ディックの『電気羊はアンドロイドの夢をみるか』ですが、これも原作のストーリーを借りたリドリー・スコットの世界そのものです。

映画と原作は別物・・・当たり前のことなんでしょうね。映画『トニー滝谷』はどうなんでしょう?

 村上春樹の小説が好き方ならお薦めしますが、ちょっと一般受けはしない映画でしょうね。イッセー尾形の演技は見応えがあります。

監督:市川準
音楽:坂本龍一
キャスト:
イッセー尾形
宮沢りえ


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