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読書 ジェイムズ・エルロイ ブラック・ダリア [日記(2010)]

ブラック・ダリア (文春文庫)

ブラック・ダリア (文春文庫)

  • 作者: ジェイムズ エルロイ
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1994/03
  • メディア: 文庫
 調べると分かるのですが、『ブラック・ダリア』事件は1947年にアメリカで実際に起きた殺人事件です。黒服をまとう映画女優志望の22歳の女性が殺され、遺体が腹部で切断されて遺棄されるという猟奇的な事件で、当時のマスコミを賑わせたようです(検索をかけると、扇情的な画像を見ることができます)。今もって未解決の事件をミステリーに仕立て作者独自の解決を描いた本書は、1940年代のアメリカ西海岸を活写した風俗小説としても読むことができます。

 ブライチャートはライトヘビー級というマイナーな階級にとどまることで36勝無敗と言う戦歴を確保 した、生き残ることに計算が働くしたたかな技巧派?。生き残るために警察組織に潜り込み今はしがない巡査。
 一方のブランチャードは、マネージャーが弱い相手と対戦させたために43勝挙げ、ロス市警の幹部の憶えもめでたく、巡査部長。
ブライチャートとブランチャードでややこしいw。

 ロス市警の宣伝のため2人が試合を行ったことで、ブライチャートとブランチャードは親しくなり、特捜課に取り立てられコンビを組みます。この2人に割って入るのがブランチャードの同棲相手ケイ。ケイはブランチャードが捕まえた強盗の元情婦で、ブランチャードはケイを大学へ行かせ修士号を2つ取らせる程入れあげていますが、肉体関係が無いという不思議な関係。
このカップルにブライチャートが加わることで、ブライチャートとケイが惹かれ合い、奇妙な三角関係が生まれます。

 ブライチャートとブランチャード(ややこしいですねぇ、この名前は何か意味があるんでしょうか)がブラックダリア事件の死体発見現場に出くわしたことで、ふたりは市警殺人課に出向、この事件の専従になることで物語は大きく動きます。

 被害者は、黒い衣装に身を包んでハリウッド周辺を徘徊していた22歳の女優志願の半ば娼婦エリザベス・ショート。胴体を真っぷたつに切断されるという異常な殺人に、全米が発情します。マスコミは、その黒い意匠から彼女をブラックダリヤと煽り、殺人の自首者は500人を超えたといいます。ブライチャートとブランチャードもまた事件の魔性に魅入られ、ブラックダリヤへとのめり込んでいきます。

 何が彼らを虜にするのか。エリザベス・ショートの猟奇的な死体が、男達の中にある破滅への欲求、再生への願望に火を付けたのか。ブラックダリア事件に係わることによって人々は否応なく自分の過去や内なる闇を見ることとなります。ある者は己の過去に足を取られて破滅へと向かい、ある者は悪行を炙り出され落後してゆきます。

 ブラックダリア事件とは何か?何が彼らを虜にするのか?作者エルロイは明かしません。作者は、エリザベス・ショートの鎮魂歌を書きつつ、自分の贖罪と解放を目指したのでしょうか。迷宮入りと分かっていながら、犯人は誰なのか?消えたブランチャードは現れるのか?ブライチャートとケイは?ブラックダリヤの服装で夜のLAで男を漁るマデリンの真意は?ともかく長い、複雑、猟奇的、暴力的、扇情的。

 本書を読んでいて、『東電OL殺人事件』を思い起こした人は多いと思います。

 暗黒のL.A.シリーズとして『ビッグ・ノーウェア』『L.A.コンフィデンシャル』『ホワイト・ジャズ』が控えています。映画もあるようなので、こっちも・・・。

タグ:読書
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