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映画 エニグマ(2001英) [日記(2011)]

エニグマ [DVD]
 エニグマはナチスが用いた有名な暗号機の名称です。映画は、英国の暗号解読機関ブレッチリー・パーク(GC&CS)を舞台に、エニグマに使われる暗号解読の『鍵』を探し、大西洋で連合軍を脅かすUボートを封じ込める物語です。
 暗号解読班の数学者ジェリコ(ダグレイ・スコット)の恋人クレア(サフロン・バロウズ)が突然失踪します。この美貌の女性クレアの失踪の謎が映画の本当のストーリーです。クレアはジェリコの回想の中でしか登場しませんが間違いなくこの映画のヒロインで、ジェリコ、ウィグラム、ウォレスなどの登場人物はこのヒロインを際だたせる背景に過ぎないのかも知れません。

 神経を病んで入院していたジェリコがブレッチリー・パークに戻るところから映画はスタートします。ジェリコの思い出の中でクレアとの関係が次第に明らかになってきます。クレアはジェリコに近づき、ジェリコを翻弄するような関係を結び理由もなく去ります。この失恋がジェリコの神経症と関係があるようで、病気から復帰したジェリコを待っていたのは、クレアの失踪でした。

 ジェリコのブレッチリー・パーク復帰は、1度は解読に成功したもの、Uボート用の新たなエニグマ(シャーク)の出現によって再度解読の研究が必要となったためです。煩雑ですが、映画が面白くなるエニグマの解説を若干・・・

 ここを見ていただくと大体のことが飲み込めます。エニグマとは、

1)機械式の暗号化・複合機である。
2)暗号方式は換字式である。つまり、平文をエニグマにかけることによってアルファベットが置き換えられ、暗号化される。
3)暗号化の鍵は、①3枚のローターとセットの順番(5枚のうち3枚を使用)、②ローターの初期値、③アルファベットをさらに置換するプラグボードの接続方法である。
4)この①~③の『鍵』を暗号文の頭に入れて無線で送信している。

 エニグマのハードウェアはすでに捕獲済みですから、『鍵』が解読できれば暗号文は復号可能となります。この鍵を解読し、ドイツ軍の暗号無線を復号する英国機関がGCCS(ブレッチリー・パーク)のようです。
 頻繁に出てくる気象報告がこの『鍵』にあたると考えられます。多くの『鍵』のサンプルが集まれば、この鍵を解くことが出来たようで、後半の船団を犠牲にしてUボートの暗号サンプルを蒐集するシーンがこれですね。

 この映画とかかわってくる背景です。
・エニグマの最初の解読者はポーランド人(マリアン・レイェフスキ)で、ポーランド諜報部は、後にこのノウハウを英仏に渡している。・・・これは重要?
イギリスの諜報機関内で解読作業をしたグループはUltraと呼ばれた。
・ウィリーのモデルはアラン・チューリング。彼の開発した機械式暗号解読機Bombeが、ブレッチリー・パークで稼働している。

 さて、映画に戻ります。
 映画でも出てきますが、エニグマがシャークに代わってローターの数が3枚から4枚になり、今までの鍵解読の手法が通用しなくなりジェリコがブレッチリー・パークに呼び戻されたわけです。英国がエニグマの解読に成功したことは極秘であり、ドイツ軍がシャークによって暗号鍵を強化したことは、この解読情報が漏れていることを意味しています。この漏洩を調査するのがウィグラム(ジェレミー・ノーサム)で、ブレッチリー・パークの解読班にスパイがいるとにらんで、ジェリコを執拗につけ回します。
 一方、クレアを忘れられないジェリコはクレアの友人ウォレス(ケイト・ウィンスレット)の助けを借りて彼女の行方を追います。そして、クレアの部屋の床下から解読前の暗号が発見され、解読後の暗号はブレッチリー・パークから消えているという謎が現れます。

 この辺りのストーリー運びは上手いです。よくある手だと思うのですが、失踪した恋人を探すうちに、恋人の隠れた一面が浮かび上がり謎が謎を生んでやがて驚くべき真相が明らかになる・・・これです。
 以下ネタバレ反転(ご注意、観る前に読むと面白さが半減します

・クレアは暗号解読の情報が欲しくてジェリコに近づいた。
・クレアの情報は恋人である解読班のジェリコの同僚パックに流れていた。
・クレアが隠匿していた暗号は、東部戦線から発せられた情報であり、『カティンの森事件』の詳細な報告であった。クレアはこれをパックに伝えた。
・パックは、ドイツ軍の『カティンの森事件』の報告書の中に弟の名前を発見する。パックはポーランド人である。
・ソ連軍のポーランド人虐殺情報をつかんだヒトラーは、これをプロパガンダとして利用しようとした。
・連合軍に不利な情報であり、英国当局はこれを隠蔽した。
・パックはこの隠蔽を不当と考え、虐殺を公表するためドイツ軍に協力する決心をする。ウィグラムの言う『敵の敵は味方』。
・パックがドイツ軍に漏洩しようとした情報は、『シャーク』の解読?
・クレアにとって、パックの行動は祖国イギリスへの裏切りであり、パックに協力したクレアは身を隠す。
・パックが情報漏洩元であることを突き止めたウィグラムは、パックがクレアを殺害したとして捜索する。
・クレアは、ウィグラムが放った(スパイを炙り出す)スパイだったが、任務の途中でパックを恋してしまう。あるいは、パックを誘惑する任務が恋に変わる。ジェリコに近づいたのも任務。

これが映画『エニグマ』のミステリの真相だと思うのですが、どんなもんでしょう。

 冒頭で、犬が森に埋められた死体を発見し、中盤でドイツ軍が森に埋められた大量の死体を発掘するシーンがあります。カティンの森事件ということは分かったのですが、こういうふうにつながってくるとは思いもよりませんでした。原作(ロバート・ハリス著の『暗号機エニグマへの挑戦』)を読んでいないので何とも言えませんが、英国の情報機関にポーランド人を配し、暗号解読と『カティンの森事件』をからめてスパイものに仕上げ、事件の影に美女ですから、上手いなと思います。
 ケイト・ウィンスレットですが、丸いメガネの小太りのオネーチャンですから、最初分かりませんでした。暗号を解いたり書類を盗み出したりのなかなか活躍で、最後はジェリコと結ばれますが、もうひとつピンときません。ヒロインはやはりクレアのサフロン・バロウズでしょう。

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エニグマ                       暗号解読機 bombe

 個の映画の制作に、ローリング・ストーンズのミック・ジャガーが名前を連ねています。映画にも出演(クレジット無し)しているらしいので探してみました。↓ これです、右から二人目。ジェリコがクレアと知り合って踊りに行きます。そのダンスホールの客として、チラと顔を出しています。

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ミック・ジャガー(右から二人目)          ケイト・ウィンスレット

監督:マイケル・アプテッド
制作:ミック・ジャガー
出演:ダグレイ・スコット ケイト・ウィンスレット サフロン・バロウズ ジェレミー・ノーサム ミック・ジャガー

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