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映画 誰が為に鐘は鳴る(1943米) [日記(2011)]

誰が為に鐘は鳴る [DVD]
 大昔に小説を読んだことがあり、映画はTVで見たことがあるのですが、腰を落ちつけて見るのは今度が始めて。
 スペイン内戦で人民戦線に義勇兵として参戦した米国人とスペイン女性の3日間のラブロマンスを描いています。

 スペイン内戦(1936~1939)は、共和政に対するフランコのクーデターで、ソ連が支援する人民戦線(左派)と、独・伊が支援する反乱軍(ファシズム)の内戦です。反ファシズムを旗印に国際義勇軍(国際旅団)が組織され、アンドレ・マルロー(希望)、ジョージ・オーウェル(カタロニア讃歌)、アーネスト・ヘミングウェイ等が参加しています。ヘミングウェイが義勇兵の経験を元に書いた小説が「誰がために鐘は鳴る」です。ロバート・キャパもカメラマンとして従軍し、人民戦線兵士の撃たれた瞬間を撮影した有名な「崩れ落ちる兵士」を撮っています。
キャパ.jpg ← これです。

 このソヴィエトの「支援」というのがクセモノで、人民戦線に軍事顧問を送り込み、無政府主義や反スターリン勢力を粛清してソヴィエトの影響力の及ぶ人民戦線を目論んだようです。国際旅団というの後ろにはコミンテルンがいるわけで、コミンテルンが国際動員かけた集団という一面をもっているようです。スターリニズムの輸出です。スペイン銀行の「金」がソヴィエトに横領されたというミステリーあがあったり、人民戦線はヘゲモニー争いで複雑な様相を呈していたようです。ソヴィエトの影がちらつく複雑な集団だったようです。

 従って、義勇軍に参加したヘミングウェイは、この国際旅団の特殊性を十分に理解していた筈です。そして、作家としてスペイン内戦を書くのであればこの輸出されたスターリニズムのもとで闘われた人間ドラマを書いてもよかったはずです。たぶん、この国際旅団の組織の実相の方が作家の興味をかき立てた筈です。しかしながら、ヘミングウェイの書いたのは、橋を爆破する任務を帯び、国際旅団から派遣された米国の大学教授ジョーダン(ゲーリー・クーパー)の単独行動です。人民戦線のゲリラ兵士は登場しますが、国際旅団の兵士はだれひとり登場しません。

 という視点で「誰が為に鐘は鳴る」という映画を見てみると、ゲーリー・クーパーとイングリッド・バーグマンのメロドラマかと思ったのですが、なかなかどうして、けっこうな人間ドラマです。
 面白いのは、ジョーダン本人よりもジョーダンを支援するゲリラの面々です。ゲリラの隊長パブロ(エイキム・タミロフ)は、かつてはファシストと闘った勇敢な人民戦線の闘士ですが、今では保身に走る臆病なリーダーとしてゲリラのメンバーから軽蔑されています。このゲリラの小隊を実質率いるのが、パブロの妻で自称共産主義者のピラー(カティナ・パクシノウ)。農民出身と思アンセルモ、エルソルド、アグスティン。そしてファシストに両親を殺されたマリア(イングリッド・バーグマン)。内戦の被害者、内戦を闘う人民戦線の兵士、人民戦線の内部対立などがそれぞれの登場人物に割り振られていて興味深いものがあります。分裂した国軍兵士や都市労働者が出てきませんが、ピレネー山脈かどこかの山中ですから贅沢は云えません。
 
 このゲリラ部隊の内部分裂、フランコ軍補給路である橋の爆破、外国人の義勇兵とスペイン娘の恋といろいろあって見応えがあります。ゲーリー・クーパーとイングリッド・バーグマンだけ見ていては勿体ないです。 

監督:サム・ウッド
出演:ゲーリー・クーパー イングリッド・バーグマン  エイキム・タミロフ カティナ・パクシノウ

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ETCマンツーマン英会話

映画『Head In The Clouds』のメイキングで、主演のスチュアート・タウンゼントが役造りの為に、脚本同様に読み込んだ本とういことで、ジョージ・オーウェルの『カタロニア讃歌』を上げていました。

『誰が為に鐘は鳴る』はDVDを持っていながらまだ見ていませんでした。是非、見たいと思います。これをきっかけにスペイン内戦について勉強してみたいと思います。ブログでのご紹介ありがとうございます。

by ETCマンツーマン英会話 (2014-01-08 14:55) 

べっちゃん

『トリコロールに燃えて』ですね、早速見てみます。
by べっちゃん (2014-01-09 20:20) 

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