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映画 東京物語(1953日) [日記(2011)]

東京物語 [DVD] COS-024
 「秋刀魚の味」が面白かったので小津安二郎の代表作と言われる「東京物語」を見てみました。「秋刀魚の味」も元祖ホームドラマでしたが、「東京物語」の方が「元祖」に相応しいです。

 「秋刀魚の味」では「ホームドラマ」だから「事件は起こらない」と書きましたが、こちらもホームドラマですが事件が起こります。尾道に住む老夫婦が、子ども達を東京に訪ねた日々を描いています。これだけでも非日常の事件で、そこで展開される親と子のかかわりは十分にホーム「ドラマ」です。
 次女京子(香川京子)と尾道で暮らす平山周吉(笠智衆)ととみ(東山千栄子)の夫婦は、思い立って東京にいる子供たちを訪ねることになります。長男・幸一(山村聰)は街の開業医、長女志げ(杉村春子)は美容院を開業しいずれも独り立ちをしています。戦死した次男の嫁紀子(原節子)は再婚せずこれも東京で一人暮らし。後に明らかになりますが、三男・敬三は大阪でサラリーマン。次男が戦死したとは云え、「とみ」が言うように「私たちは幸せ」な環境です。

 長男も長女も両親の上京を歓待したのは最初だけで、滞在が長引くと、自分たちの仕事と生活が優先、次第に両親の存在がうとましくなり、手っ取り早い親孝行としてふたりを熱海に送り込む始末。戦死した息子の嫁紀子だけがふたりを東京見物に誘い、自分のアパートで歓待します。
 実の息子娘から疎外された周吉ととみは、血の繋がらない紀子との交流に慰めを見いだします。周吉ととみを挟んで、幸一・志げvs.紀子の構図です。
周吉の友人(東野英治郎)の酔いにまかせた愚痴(「秋刀魚の味」もそうですが、この人の酔っぱらいは絶品です)。

しかし子ども云うモンも、おらにゃおらんで寂しいし、おりゃおるでだんだん親を邪魔にしおる

があり、では家族って何なんだと問いかける映画です。それだけでは足りず、とみの葬儀(亡くなります)が終わった精進落としの席で形見分けを要求する志げの厚顔、葬儀が終わるとそそくさと東京に帰る幸一、そして紀子だけが一段落が着くまで尾道に残ります。ここでもまた、幸一・志げvs.紀子の構図が提出され、家族とは何だとなるわけです。
 三男敬三のつぶやき
 
孝行したい時分に親はなし、さればとて 墓に布団も着せられず
 
もあり、私も人の親であり人の子ですから、思わず考え込んでしまいます。
 
近所のくやみの言葉に周吉が答えます、

ひとりになると急に日が長うなりますわい

と答え、こどもたちが帰り、ひとりぽつねんと取り残された姿で幕。

妻を亡くしてひとりとなった「東京物語」の周吉の孤独が、そのまま10年後の、娘を嫁がせひとりとなった「秋刀魚の味」の周平へつながります。孤老という言葉が胸に迫る映画です。
 
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御前様 笠智衆                    伝説の原節子
 
監督:小津安二郎
出演:
笠智衆 東山千栄子 原節子 杉村春子 山村聡

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