映画 東京物語(1953日) [日記(2011)]
次女京子(香川京子)と尾道で暮らす平山周吉(笠智衆)ととみ(東山千栄子)の夫婦は、思い立って東京にいる子供たちを訪ねることになります。長男・幸一(山村聰)は街の開業医、長女志げ(杉村春子)は美容院を開業しいずれも独り立ちをしています。戦死した次男の嫁紀子(原節子)は再婚せずこれも東京で一人暮らし。後に明らかになりますが、三男・敬三は大阪でサラリーマン。次男が戦死したとは云え、「とみ」が言うように「私たちは幸せ」な環境です。
長男も長女も両親の上京を歓待したのは最初だけで、滞在が長引くと、自分たちの仕事と生活が優先、次第に両親の存在がうとましくなり、手っ取り早い親孝行としてふたりを熱海に送り込む始末。戦死した息子の嫁紀子だけがふたりを東京見物に誘い、自分のアパートで歓待します。
実の息子娘から疎外された周吉ととみは、血の繋がらない紀子との交流に慰めを見いだします。周吉ととみを挟んで、幸一・志げvs.紀子の構図です。
周吉の友人(東野英治郎)の酔いにまかせた愚痴(「秋刀魚の味」もそうですが、この人の酔っぱらいは絶品です)。
があり、では家族って何なんだと問いかける映画です。それだけでは足りず、とみの葬儀(亡くなります)が終わった精進落としの席で形見分けを要求する志げの厚顔、葬儀が終わるとそそくさと東京に帰る幸一、そして紀子だけが一段落が着くまで尾道に残ります。ここでもまた、幸一・志げvs.紀子の構図が提出され、家族とは何だとなるわけです。
三男敬三のつぶやき
孝行したい時分に親はなし、さればとて 墓に布団も着せられず
もあり、私も人の親であり人の子ですから、思わず考え込んでしまいます。
近所のくやみの言葉に周吉が答えます、
ひとりになると急に日が長うなりますわい
と答え、こどもたちが帰り、ひとりぽつねんと取り残された姿で幕。
妻を亡くしてひとりとなった「東京物語」の周吉の孤独が、そのまま10年後の、娘を嫁がせひとりとなった「秋刀魚の味」の周平へつながります。孤老という言葉が胸に迫る映画です。
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