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映画 鬼龍院花子の生涯(1982日) [日記(2012)]

鬼龍院花子の生涯 [DVD]
 「陽暉楼」が面白くなかったので期待せずに見ましたが、予想通り面白くなかったです(笑。仲代達矢、岩下志麻、夏目雅子と実力派を揃えていますからそれなりに仕上がっています。俳優それぞれが、目いっぱい熱演するわけですが、これがバラバラ。監督の技量ですかねぇ。

 例えば、鬼政(仲代達矢)が誘拐された花子を取り戻すために龍松一家に「殴り込み」をかけるシーンです。「花子にしてやれることは、一緒に死んでやることだ」と、死を決した鬼政と娘の松恵(夏目雅子)の別れのシーンで、仲代達矢と夏目雅子の演技が胸を打ちます。が、龍松一家が花子を誘拐して鬼政と事を構える必然性みたいなものが全然無く、この見せ場もストーリーから浮いています。
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 元芸者で鬼政の妻・歌を演じる岩下志麻、この人もいいです。鬼政は妻妾同居、それも3人も妾を囲って同じ屋根の下で暮らすという無軌道振り。女としては鬼政に顧みられなくなった歌は、矜持だけで生きている「極道の妻」の哀れを見事に演じます。「鬼龍院花子の生涯」からこの歌を切り離してシリーズ化したものが五社英雄の「極道の妻たち」で、そう言う意味では岩下志麻(そっちの方の)開眼の演技でしょう。
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 夏目雅子、これは「なめたらいかんぜよ」ですね。この科白は夏目雅子で有名ですが、映画の中では岩下志麻が先に言ってます。

 映画そのものです。タイトルは「鬼龍院花子の生涯」ですが、土佐の侠客・鬼龍院政五郎の養女となった松恵と、政五郎、その妻歌(岩下志麻)、政五郎の実の娘・花子が織りなすホームドラマです。「侠客一家」のホームドラマですから、「出入り」があり「殴り込み」があり、切ったハッタで血の雨が降るホームドラマです。

 原作は宮尾登美子の所謂「土佐もの」ですが、五社英雄の手にかかると「換骨奪胎」見事に東映「任侠映画」に変身します。原作を読んでいないので何とも言えませんが、小説「鬼龍院花子の生涯」は、明らかに「」の綾子を松恵に、岩伍を政五郎に置き換えたバリエーションです。女衒、侠客の家に生まれた(養女として入った)ヒロインが特殊な世界の中で父親に反発しつつ最後は和解するという物語を軸に、様々な女達の生き様を描いていると思われます。五社英雄にかかると鬼龍院政五郎が主役の「ヤクザ映画」となります。

 鬼政一家と横車を押す龍松一家、花子が誘拐され松恵の夫・恭介が殺され、政五郎は花子救出のために長ドスを引っさげて死地に赴く、といった東映伝統の任侠映画の型をしっかり守っています。最後に、この「型」が一瞬に破綻する場面があります、このシーンです。
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 政五郎は自身も刀傷を受けながら花子が監禁されている部屋に踏み込みます。この時、花子は自分を誘拐した男を政五郎の刃からかばうという行動に出ます。婚約者を殺され、政五郎が見そめた結婚相手は松恵に取られるという不運の花子ならではの選択なのでしょう。この花子の行動に政五郎は愕然とするわけですが、このシーンによって、「鬼龍院花子の生涯」を換骨奪胎した五社英雄の「任侠映画」は脆くも崩れ去ります。この映画の唯一の見どころです(笑。
 
 五社英雄さん、「なめたらいかんぜよ!」。

監督:五社英雄
原作:宮尾登美子
出演:仲代達矢 夏目雅子 岩下志麻 室田日出男
 
鬼龍院花子の生涯 (文春文庫)

鬼龍院花子の生涯 (文春文庫)

  • 作者: 宮尾 登美子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/03/10
  • メディア: 文庫

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コメント 2

ktm

この映画、夏目さんの美しさだけが残っています。
あの有名な夫の遺骨を取りに行くところよりも、そのあと遺骨を齧るシーンがあったように思うのですけど、それが印象的でした。
夏目さんは美人薄命の言葉通りの人でしたね。 今でも、デビューのあのポスターを思い出します。

by ktm (2012-04-30 08:14) 

べっちゃん

夏目雅子、きれいですね。映画としては、宮尾登美子の原作を生かし切れていない様に思います。まぁ、五社英雄が作ると、何でも任侠映画になってしまいますが。こんど原作を読んでみます。
by べっちゃん (2012-04-30 20:07) 

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