BSシネマ 映画 カラマーゾフの兄弟 第3部(1968ソ) [日記(2012)]
第2部では、ミーチャがグルーシェニカの愛を取り戻し、父親殺しの嫌疑で捜査の手が伸びるところで終わっていました。第3部はこのフョードル殺人事件の被疑者として逮捕され、裁判によって真犯人が明らかにされます。フョードルを殺したのは誰か、はたまたその動機とは。
原作を読んで犯人は知っていますから、映画はスメルジャコフで犯人であることを如何に観客(私)に納得させるかという一点に絞られると思います。原作では、スメルジャコフの動機がほとんど説明されていません。イワンにそそのかされて殺したとは言ってますが、イワンは殺せとは言ってないわけで、イワンの願望をスメルジャコフが代行したという程度です。映画では独自の解釈か何かあるのかと思ったのですが、ありません。原作同様スメルジャコフが犯人であることについてすっきりしません。例の「悪魔」が登場してイワンと問答をしますが、映画のストーリーとの必然性は感じられず、これら哲学問答、宗教問答は全般にストーリーから浮いています。
悪魔 狂ったイワン
スメルジャコフは自殺してしまいますから、スメルジャコフ抜きでミーチャを被疑者にフョードル殺人事件の裁判が進行します。証人としてグルーシェニカ、カチェリーナが登場して醜態を演じたり、イワンが狂気に囚われたりといろいろ見せ場は用意してありますが要領を得ません。判決があったのか無かったのかも分からないままミーチャがシベリヤ送りとなり、グルーシェニカは愛するミーチャについてシベリヤ出発するシーンで幕となります。父親は殺され、長男はシベリヤ送り、次男は発狂?、兄弟のひとりと目される私生児は自殺。無事なのは三男アリョーシャだけで、カラマーゾフ家は崩壊一歩手前。ミーチャを追ったグルーシェニカだけが希望です。
ドーミトリとイワンの怪物性が目立ってスメルジャコフがそれに続き、アリョーシャは影が薄いです。「カラマーゾフの兄弟」の続編が書かれていれば、そちらで活躍する予定だったらしいですから、致し方ありません。
映画「カラマーゾフの兄弟(1~3部)」を一言で云うと、父親と息子がひとりの女性を争うホームドラマです。愛憎に嫉妬、殺人事件などのエピソードが散りばめられ、プロットは十分に用意されていますが関連性に欠けます。わずか4日間?の物語ですが、これを俯瞰的に描こうとすると映画としては散漫となります。余分なエピソードを削って、フョードル、ミーチャ、グルーシェニカの三角関係と殺人事件、意外な犯人の出現に絞ったほうがドラマとしてはまとまった様な気がします。
でお薦めかと云うと、原作を読んだ人のアラ探し、これから原作を読もうという人の予習、挫折した人の再挑戦のキッカケ、ということならお薦めです。
第3部の冒頭で、プイリエフ監督は急死したため、ミハイル・ウリヤノフ(ドミートリイ)、キリール・ラブロフ(イワン)が協力して完成させたという字幕がでます。まさに「カラマーゾフの兄弟」による映画ですね。
シベリヤに流されるミーチャ ミーチャを追うグルーシェニカ
監督:イワン・プィリエフ
出演:ミハイル・ウリヤーノフ キリール・ラヴロフ アンドレイ・ミヤフコフ マルク・プルードキン リオネラ・プィリエワ スヴェトラーナ・コルコーシコ
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