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BSシネマ 新選組始末記(1963日) [日記(2013)]

新選組始末記 [DVD]
 池田屋事件の探索で活躍した新撰組・監察、山崎烝を主人公にした少し変わった映画です。山崎烝といえば、『燃えよ剣』では、薬屋(行商人)に化けて池田屋に泊まり込み、新撰組の討ち入りを手引きしています。近藤勇以下「試衛館」の9人に比べると、新撰組結成後に入隊した山崎烝はその経歴に不明な点が多いようです。

・大阪または京都の針医の息子
・医術の心得があった(松本良順に手ほどきを受けた)
・新撰組では監察方で、池田屋事件で活躍
・近藤勇の信頼が篤かった
・鳥羽伏見の戦いで負傷し、江戸へ向かう船中で死去

この程度の様です。映画では、この履歴をうまく取り込んでいます。

 山崎烝(市川雷蔵)は浪人として登場し、近藤勇(若山富三郎)の生き様に惚れ込んで新撰組に入隊します。さすが針医の息子では恰好がつかなかったようです。「医術の心得があった」ということをヒントに、山崎の恋人に女医?(御殿医師の娘)「しま」(藤村志保)という女性を配します。
 芹沢鴨の乱行と暗殺、相撲力士との乱闘事件とその顛末である大阪与力の暗殺、古高俊太郎の拷問、「池田屋事件」など、壬生浪士組が粛正を経て近藤勇の「新撰組」に発展する過程を比較的忠実に再現しています。象徴としての局長・近藤と参謀としての副長・土方歳三(天知茂)の関係も、今日の定説通りで違和感はありません。もっとも、「新撰組」の卸元・子母澤寛の原作ですから当たり前といえば当たり前でしょう。

 この映画の独創?は、新撰組を批判的に見る山崎烝の視点です。山崎は、近藤勇の武士道に惚れて新撰組に入隊したにもかかわらず、芹沢鴨や大阪与力の暗殺事件に巻き込まれて、新撰組と近藤のやり方に次第に批判的になってゆきます。山崎は、池田屋事件を経て鳥羽伏見の戦いで死ぬことが分かっていますから、この「批判的な山崎」にどう決着をつけるのか興味が出ます。一旦は恋人「しま」のもとに身を寄せ「脱走」かと思わせるのですが、たいした理由もなく新撰組に舞い戻ってしまい、池田屋事件に突入します。

 池田屋事件の際、浪士の会合が二説に別れて土方は四国屋、近藤は池田屋に向かいます。土方は、古高俊太郎を拷問して自白させた四国屋を本命と考え、近藤は池田屋を選択します。近藤は、武士である古高は決して同志を裏切らない筈であり、信頼する山崎の情報を信じ池田屋を本命と考えたのです。この1点だけは、なるほどと感心しました。
 『燃えよ剣』では、山崎は薬売りの行商に化けて池田屋に泊まり込み、勤皇の志士で混み合う当日は池田屋の使用人になりすまして料理を運び、志士の刀を隣の部屋に運び込むという離れ業を演じます。これは司馬遼の創作で、そういうシーンはありません。

 1963年の映画ですから仕方がありませんが、大味な映画です。市川雷蔵ファンか、新撰組フリーク以外にはあまりお薦めできません。

監督:三隅研次
原作:子母澤寛
出演:市川雷蔵 若山富三郎 天知茂 藤村志保

タグ:BSシネマ
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cocoa051

市川雷蔵の名前に懐かしさがこみ上げてきました。
この映画は記憶にありませんでしたが、この時代、市川雷蔵の映画をよく観ました。とても懐かしく読ませていただきました。
by cocoa051 (2013-10-18 02:40) 

べっちゃん

高倉健、菅原文太の世代なので、市川雷蔵は初めて見ました。37歳で亡くなっているのですね。
この映画で若山富三郎が城 健三朗と名乗っていたことを初めて知りました。
by べっちゃん (2013-10-18 09:10) 

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