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映画 ベン・ハー(1959米)  NHK/BS年越し映画マラソン [日記(2016)]

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 数十年ぶりに観ました。戦車レースしか憶えていなかったのですが、この映画が、ユダヤの奴隷ベン・ハーの姿を借りて「ナザレのイエス」(キリスト)を描いた映画だったということに、遅まきながら気づきました。

 舞台は紀元一世紀のエルサレム。ローマ軍の司令官メッサーラ(スティーヴン・ボイド)は、幼馴染みのユダヤの貴族ベン・ハー(チャールトン・ヘストン) にローマ帝国への協力を依頼します。ユダヤの王の血を引くベン・ハーが率先してローマに忠誠を誓えば、ローマのユダヤ支配が円滑に進むと考えたわけです。ベン・ハーはこれを拒否したため、ローマ総督に危害を加えた反逆者としてガレー船を漕ぐ奴隷に落とされ、母親と妹は囚われます。ここから、メッサーラへの復讐を誓ったベン・ハーの数奇な物語が始ます。

 ベン・ハーはローマの将軍アリウス(ジャック・ホーキンス)の命を助けたことで、その息子となりユダヤの地に戻ります。囚われの母親と妹が死んだことを知らされた(実はレプラを病んで死の谷に追放されている)ベン・ハーは、復讐のためメッサーラの出る戦車レースに出場し、あの有名なシーンとなります。
 ベン・ハーは優勝しユダヤの英雄となり、メッサーラはレースの事故で命を落とします。支配者のローマがユダヤに負けることあってはならず、ユダヤの団結を促す英雄の出現はローマの最も嫌うところです。ローマ総督はベン・ハーをローマ市民にすることで収拾を図ろうとし、ベン・ハーはまたもこれを拒否します。言い換えれば、ローマ市民になることを拒否したベン・ハーはローマ帝国に叛旗を翻したことになります。

 戦車レースの後、映画の主人公はイエスに変わります。メッサーラによって母と妹が生きていること、死病に侵されていることが明かされ、ベン・ハーは苦悩します。主人公は依然ベン・ハーのようですが、真の主人公はイエスにすり替わります。イエスとベン・ハーの接点は、イエスが奴隷となったベン・ハーに水を与え命を救ったことです。ベン・ハーは、その時のユダヤ人がイエスであることを知り、ゴルゴダの丘に引かれるイエスに水を差出します。ここでベン・ハーとイエスの存在は二重写しとなります。つまり、これまで描かれてきたベン・ハーの数奇な物語は、そのままイエスの物語でもあるということです。

 この後、ローマ帝国を否定し「神の王国」を説くイエスは反逆者として十字架に掛けられ処刑されますが、これはベン・ハーの未来の姿でもあるということでしょう。イエス復活の恩寵でベン・ハーの母親と妹の病は癒えHappyEndとなりますが、ベン・ハーのその後を描くとすれば、間違いなく、イエスの遺志を継いだユダヤの解放運動とローマによる処刑でしょう。
 というベン・ハー=イエスという構図が成り立つなら、なかなか奥深い映画です。 

監督:ウィリアム・ワイラー
出演:チャールトン・ヘストン スティーヴン・ボイド ジャック・ホーキンス

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