マイクル・コナリー 天使と罪の街 [日記(2007)]
主人公はヒエロニムス・ボッシュ、30年勤めたロス市警を辞めた私立探偵。冒頭で初対面の人物とこんな会話を交わしています。
「ヒエロニムス・ボッシュ。あの頭のおかしな画家みたいだな、だろ?」・・・初対面の人物
「あの画家は頭がおかしかったという者もいるし、未来を正確に予見したのだという者もいる。」・・・ボッシュ
画家とは『快楽の園』を描いた15世紀オランダの画家ヒエロニムス・ボッシュのことです。ハードボイルドを読む楽しみは、こうした会話に出会う楽しみでもあります。それと、主人公がさりげなく呟く箴言。〈追い波〉という船名の由来についてこう云います、
「〈追い波〉とは、注意して見ていなければならない波のことだ、とテリーは言った。盲点から近づいてきて、背後から襲ってくるのだという。なかなかいい処世訓だ。」
物語は、かつての僚友テリー(元FBI行動科学課心理分析官)の死の真相を追うボッシュ(元ロス市警刑事で現在は私立探偵)、ラスベガス郊外の砂漠で発見された8体の殺人死体を調べるFBI捜査官レイチェル、どうやらその殺人事件の犯人とおぼしきバッカスの3人の物語が平行して進み、やがて1本に修練される。人公ボッシュは云うに及ばずテリー、レイチェル、バッカスそれぞれも、シリーズの何処かで絡み合っており、その過去が本書にも重要な影を落としているらしい。この辺りはシリーズを順に読むに越したことはないが、いきなり本書を読んでも、4人のミステリアスな過去が次第に明らかとなり十分楽しめます。
訳者あとがきによると、
「コナリー作品オール・キャスト(ほぼ)総出演という読者サービスをほどこした上で、〈ボッシュ・サーガ〉以外の主要二作品にケリをつけるという荒技を駆使した、派手な物語になっている。」
『わが心臓の痛み』『夜より暗き闇』『ザ・ポエット』が一冊に詰まった本と云うことらしいです。
本書が面白かったので少し調べてみました。
wikiペディア「マイクル・コナリー」によると、一連のボッシュ・シリーズは順を追って読まないと面白さが半減するらしいです。
コナリーの主な邦訳は、
・ナイトホークス (1992) 扶桑社 文庫
→ハリー・ボッシュ シリーズ第1作。FBI特別捜査官エレノア・ウィッシュ(後の
妻)が登場。
・ブラック・アイス (1993) 扶桑社 文庫
→シリーズに影を落とす?ドールメイカー連続殺人事件。
・ブラック・ハート (1994) 扶桑社 文庫
→ドールメイカー連続殺人事件解決。
・ラスト・コヨーテ (1995) 扶桑社 文庫
→実母殺害事件の謎に取り組むことになるらしい。ボッシュが休職?
・ザ・ポエット (1996) 扶桑社 文庫
→「天使と罪の街」にも登場する詩人(ポエット)の犯罪。FBI特別捜査官レイチェル・ウォリングが登場。
・トランク・ミュージック (1997) 扶桑社 文庫
→休職後の第1弾。
・わが心臓の痛み (1998) 扶桑社 文庫
→テリー・マッケイレブ・シリーズ第1弾。グラシエラ(テリーの後の妻)登場。
・エンジェルズ・フライト (1999) 扶桑社 文庫版
・バッドラック・ムーン (2000) 講談社 文庫
→キャシー・ブラックの物語。非ボッシュシリーズ。
・夜より暗き闇 (2001) 講談社文庫
→テリー・マッケイレブ・シリーズ第2弾
・シティ・オブ・ボーンズ (2002) 早川書房 文庫
→ボッシュがロス市警を退職。
・チェイシング・リリー (2002) 早川書房 単行本、文庫
→主人公は科学者、ヘンリー・ピアス。非ボッシュシリーズ。
・暗く聖なる夜 (2003) 講談社文庫
→最高傑作らしい。エレノア・ウィッシュが元妻として登場(何処で結婚して、何処で離婚?)
・天使と罪の街 (2004) 講談社文庫・・・本書。
→「ザ・ポエット」の続編。テリー・マッケイレブ、その妻グラシエラ、レイチェル・ウォリング、ボッシュの元妻エレノア、当然「詩人」も登場。
・終決者たち (2005) 講談社文庫・・・ボッシュシリーズ最新刊
→ボッシュ、ロス市警復帰。
と云うわけで、ハリー・ボッシュファミリー?が縦横に交錯し、こりゃ「ナイトホークス」から順を追って読まないといけないかなと思います。しかしながら、古本ではあまり見かけないのが難点。
噂に違わず面白いです →☆☆☆☆★
シリーズ作品は大好きです。
この記事参考にさせて頂きます。^-^
by (2008-01-24 15:29)